《1377》 医学雑誌の狭き門と、医学書でない一般書 [未分類]

Gutという医学誌に掲載された医学論文について
私なりに解説をしてきました。この雑誌は、
消化器領域では一流とされる国際雑誌です。

私は大阪大学で研究していた25年前、自分の研究を
この雑誌に投稿したのですが掲載叶わず、
これよりレベルが低い米国の医学雑誌にしか載りませんでした。

医学雑誌にも、いわゆる格づけが厳然とあります。
一流雑誌から四流、五流雑誌まで様々なものがある。
一流雑誌の合格率は低く、狭き門です。

一流に落ちたら、今度は二流へと狙いを下げていきます。
あたかも大学受験の受験校選びと似ています。
つまりひと口に医学雑誌といっても様々なのです。

各雑誌には、一流の審査委員がいて、厳しくチェックされます。
追加検討や論文の修正を求められることがよくあります。
それで初めて合格(アクセプト)となれば祝杯をあげます。

各医学雑誌にはインパクトファクターが決められています。
大学の偏差値のようなものです。
偏差値と同様、公開されていて国際的な指標です。

もちろん一流雑誌ほど、その点数が高いです。
インパクトファクターが高い医学雑誌に載れば、一流の論文。
たくさん論文を書いた医者は、それらの数字を合計します。

医学部教授になるには、まずは自分のインパクトファクターでの
勝負から始まります。もちろん他の要素もありますが。
だから手術が下手でも、この数字が高ければ教授になることも。

医学雑誌に掲載された論文のことをエビデンスと言います。
医学雑誌は、一般の書店等では流通していません。
ですから一般の方が目にすることは普通、ありません。

一般の書店に並んでいる本は、医学書ではありません。
一般の書籍には何を書いてもよく、表現や出版の自由という
憲法によってその権利が護られています。

ですから一般書には何を書いてもか構わないし止められない。
いくら過激なことを書いても誰も止めることはできません。
極端な話、ウソや妄想をいくら書いても全くの自由です。

そのかわりその責任は、すべて著者が負います。
間違っていれば反論する人が出て、それが違っていれば
社会的信用低下という社会的制裁を受けます。

一方、もし医学雑誌に嘘を書いたら、もちろん“取り消し”
になり、一生その医学雑誌には受け付けてもらえません。
除名と出入り禁止という厳しい戒律で威厳を保っています。

科学の世界には、一般の人が驚くような厳しいルールがある。
いろんな専門家のチェックを経てはじめてエビデンスになる。
一般の書籍を1000冊書こうがエビデンスではありません。

書店にいくと医学コーナーがありますが、
あれは医学書ではありません。
一般の人に医学を解説した本であり、エビデンスとは無縁です。

プロ野球と草野球の違いと似ています。
オリンピックと小学校の運動会の違いだと思ってください。
というのも両者を混同している市民が沢山おられるからです。

たとえば、Gutという医学雑誌に載ることと、一般書を
出版することは、まったく次元が違うということです。
エビデンスとは、医学論文の世界にしか存在しません。

(続く)