《1378》 エビデンスって何でしょうか? [未分類]

「先生、その薬はエビデンスがあるのでしょうか?」
診察室で患者さんにそう聞かれました。
そんな時代なのですね。

エビデンスとは、証拠や根拠という意味です。
医療の根拠となるデータを示せ、という訳。
現代医学は多くのエビデンスで成り立っています。

医学論文では、統計学的処理である命題を判定します。
たとえばあるお薬が効くのか、効かないか。
あるいは、ある手術が死亡率を減少させるか否か。

そのために対象を無作為に2群に分ける必要があります。
早期胃がんが見つかった人に、薬を飲ませるかどうか。
あるいは手術をする群としない群に分けて様子を見る。

動物実験なら可能かもしれませんが人間では困難です。
倫理的な問題があるからです。
検討できるとしたら過去を振り返って統計を取ること。

つまり、何らかの理由で手術をしなかった早期胃がんの人が
その後どうなったのかを、追跡して調べるのです。
あの人は今、みたいな感じです。

本当は無作為に2群に分けて、その後を見ていきたいが
それができないので、次善の策として、そうするのです。
そして手術をした群と、統計学的に比較するのです。

2群が95%以上の確率で正しいと判断されたら、
「有意差がある」という表現をします。
すなわち、薬が効く、手術が有効であると言える訳です。

しかし裏を返せば5%の確率で効かない人もいるわけです。
95%の人には有効でも、5%の人には有効でないのです。
それでも「有意差がある」という結論になります。

以上をエビデンスといいます。
エビデンスとは、5%の例外を含んでいます。
例外があるかもしれないが概ね正しいだろうが、エビデンス。

エビデンスとは完全無欠の絶対的真理ではありません。
5%の例外や5%間違う可能性もあるのがエビデンス。
ひとつの論文だけでは疑わしいのでいくつかの論文を集計も。

つまり有効という結論の論文たちと、相反する意見の論文を
集めてそれぞれの論文の結論だけをまた統計処理してみます。
そうした分析をメタ解析と言います。

メタ解析でも有効性が認められたら、
エビデンスレベルはさらに上がります。
そこまで来るには大変ですが多くの場合やろうとしています。

以上は医学論文という形で医学雑誌の中でしか行われません。
書籍や週刊誌や新聞などに持論を何百回書いても、
それはエビデンスではなく、単に個人的な意見にすぎません。

メタ解析の結果、有意差があれば、真のエビデンスと言える。
どうも患者さんの思うエビデンスと私たちの認識している
エビデンスとは違うように思うので、書いてみました。