《1379》 何のためにピロリ菌を除菌するのか? [未分類]

「私のピロリ菌を除菌してください」と受診される人が
ときどきおられます。
テレビの健康番組の影響がかなりあると思います。

「何のために除菌したいのですか?」と聞くと
「胃がんにならないため」だと言われます。
たしかに、ピロリ菌がいない方がなりにくい。

「血液検査をしてから除菌して」ともよく言われます。
え? 血液検査で除菌?
そんなの誰が言っていたの? と聞き返します。

すると、テレビで専門家がそう言っていたとのことです。
血液検査でピロリ菌がいるかどうかが簡単に分かるので
いれば除菌してもらえる、とテレビで言っていたとのこと。

私が「胃カメラをしないと除菌はできませんよ」と説明します。
すると、胃カメラなしでも除菌ができるとテレビが言っていたと。
町医者よりテレビの方が上だとのご意見です。

「もし胃がんがあれば除菌より、胃がんの治療ですよ」なんて
説明しますが、このヤブ医者が、なんて顔で見られます。
つくづくテレビの影響力は大きいのだな、と思います。

特に半分認知症になりかかっている方は引きさがりません。
血液検査で除菌をしろ、いやできない、の押し問答になる。
いくら時間をかけて説明しても、刷り込みには勝てません。

たしかに昨年からピロリ菌が陽性の慢性胃炎への
除菌療法が健康保険で認められました。
それまでは胃潰瘍と十二指腸潰瘍のみでした。

除菌対象者の拡大は、画期的なものだと喜んでいます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、そう多くはありませんが、
ピロリ菌陽性の慢性胃炎患者さんは国民の約半数。

医療費高騰が問題となる中、ピロリ菌除菌の対象者が
大幅に拡大されたことは凄いことだと思います。
その事情を患者さんに詳しく説明する必要があります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍での除菌の目的は再発防止のため。
一方慢性胃炎での除菌の目的は胃がんの予防のためです。
同じ除菌と言っても、その目的が少し異なると思います。

ところで、内視鏡をしないと除菌ができないという理由は
ご理解いただけるでしょうか?
胃がんが無いことは、内視鏡でしか確認できないからです。

(続く)