よく「血液検査でピロリ菌がいるか調べてくれ」と言われます。
しかし血液検査では今、ピロリ菌がいるかどうか分らない。
分かるのは、過去に感染があったかどうかです。
免疫という言葉を思い出してください。
ウイルスや細菌に感染すると、免疫ができます。
正確には、IgG抗体というものができます。
ピロリ菌の血液検査とは、それを調べているのです。
ですからいくら「テレビで血液検査で分かると言っていた」と
泣きつかれても、過去のことが分かるだけなのです。
除菌する条件は、
胃がんが無いこと
今、ピロリ菌がいること
です。
それを調べるのは、胃カメラで粘膜を採取して
CLOテストという培地に入れて色が変わるかどうかを
調べることです。
あるいは、尿素呼気試験(UBT)を行うことです。
では、血液検査でピロリ菌抗体を調べるのはどんな時か?
平たく言えば、“あたり”をつける時です。
集団検診などで大勢の中から感染者を絞りこむ時。
あるいは、初診の患者さんが胃カメラを受ける前。
要は、いきなり胃カメラとなると抵抗がある場合がある。
あるいは、効率が悪いという指摘がある。
ならば、ハイリスクグループを同定したいわけです。
ピロリ菌の血液検査は、そのような場合のためにある。
私はそのように理解しています。従って日常診療で
ピロリ菌抗体を測定することはありません。
そんな事情で、「血液検査を」と言って来られた患者さんを
ついつい怒らしてしまうのですが、仕方が無いと諦めています。
繰り返しになりますが、胃がんが無いことが前提なのです。