《1388》 正露丸を上手に使おう [未分類]

今日も感染性胃腸炎の話をします。
嘔吐や下痢を訴えて受診される方が急増しています。

多くはおそらくノロウイルスに感染したのだと思いますが、
できるだけノロウイルスという言葉を使わないようにしています。
「ノロウイルス」と聞いただけで、パニックになる人がいるから。

学校や会社から診断書をもらって来なさいとか、
何日休めばいいのかとか、同僚や家族にうつらないのかなど、
まるで死に至る怖い病気のようなイメージを
持っている人がおられるのです。

感染性胃腸炎は、「急性胃腸炎」とほぼ同じ意味で使っています。
似たような言葉に「お腹の風邪」「吐き下し」という言葉も使います。
どこかウイルス性というニュアンスを含ませています。

そもそも感染性胃腸炎は病名ですが、ノロウイルスは病原体の名前です。
いずれにせよ、この季節の嘔吐や下痢はわざわざノロノロと言わずに、
昔ながらの「吐き下し」でもいいのではないか、と私は考えます。

そうはいっても施設や会社や家族内での集団感染を
防止するのは、排便後のこまめな手洗いや吐物の消毒が
大切です。石鹸や洗剤で充分。

ただノロウイルスは高温環境にも低温環境にもたいへん強いウイルス。
30度で1時間くらいの軽い過熱処理では死滅しません。
また4℃の低温でも1週間位は安定です。

食べ物であれば85度以上1分間の過熱で
ノロウイルスは死滅します。
消毒には塩素系消毒薬を用います。

もし床の上に嘔吐したらウエットテイシュ等でかき寄せて
ビニール手袋をしてゴミ袋に入れた後に、塩素系消毒薬をかけます。
間違っても床や絨毯に掃除機をかけないでください

以前、ホテルの渡り廊下にあった吐物をスタッフが処理した後に
掃除機をかけてしまい、そこを通ったお客さんたちがノロウイルスに
集団感染したという“事件”があったことは以前にも、書きました。

掃除機でウイルスを空気中に拡散しないように。

さて、吐き下しの症状にどう対処すればいいのか。
繰り返しになりますが、私は2食抜いて、スポーツドリンクを
チビチビ飲んで、水分補給だけして胃腸を休めてください、と説明。

いわゆる下痢止めは、腸の蠕動を止めてしまうので使わない方がいい。
その代わり日本ではビオフェルミン、消化剤などがよく処方されます。
漢方では、五令散や桂枝人参湯が有効ですが、昔からある正露丸もいい。

正露丸とは、木クレオソート(もくクレオソート)を
主成分とする一般用医薬品。
製造するメーカーや製品によって配合に多少の違いがあります。
腸粘膜からの過剰な水分分泌や腸の過剰な蠕動を抑制します。

正露丸(これは商品名ではなく一般名)は111年の歴史があります。
市場にはいろいろな商品がありますが、腸管の動きを止めないタイプ
の正露丸を飲んでくださいね、と説明しています。

正露丸は、まさに医者要らずで、旅行の時にも持って行くべきです。
しかし小児や高齢者など、脱水がある場合は医療機関で点滴を行います。
また、もし血便がみられたらば別の病気ですから必ず受診してください。

また慢性的な下痢であれば、過敏性腸症候群の可能性もあります。
この季節の軽い吐き下しであれは自己管理だけでもよいでしょう。
軽い風邪や軽い吐き下し程度では、薬局で済ませてもいい。

薬局には薬剤師さんがいて相談にのってくれます。
こうした自己管理は、セルフメデイケーションともいいますが、
今後、重要になってくる考え方だと思います。

いまだに風邪でいきなり大病院を受診される人がおられますが、
それでは医療保険の財源が枯渇してしまいます。

迷った時は、まず近所のかかりつけ医に相談してください。
相談だけの受診でもいいと思います。