《0141》 タバコにまつわるお金の話 [未分類]

今日は、禁煙治療にかかる医療費の話です。

院外処方の医療機関を、5回受診した場合にかかる医療費を説明します。
まず、ニコチン依存症管理料という医療費が算定されます。
ニコチン依存症管理料とは、「禁煙治療のための標準手順書」に沿って、
初回の管理料を算定した日から12週間にわたり計5回の禁煙治療を
行った時に算定します。

初回が230点で、2、3、4回目は184点、5回目は180点(1点は10円)です。
3割負担の方は、張り薬(ニコチンパッチ)による8週間の治療の窓口負担として
約12000円になります。

飲み薬(バレニクリン)による12週間の治療では、約18000円です。
この医療費には、再診料と5回分のニコチン依存症管理料を含みます。

後者の方が治療期間が長いこともあり、やや高めですが、成功率が高いので、
一長一短と言えるでしょう。
老人など1割負担の方は、この3分の1になります。
もし、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんを疑ってレントゲン検査などをした場合は、
検査代が加わります。

合計2万円近い投資は、このご時世では大きいかもしれません。
しかし1日1箱吸っている方の場合、3カ月で約27000円、1年間で約11万円、
10年間で100万円ものタバコ代になります。
来月からタバコ代が値上げされるので、一層の負担増となります。

しかも失われるのは、タバコ代だけではありません。
失われる寿命は、お金に換算することができません。
40歳の時点でタバコを吸っている人の寿命は4年短いそうです。

仮に4人家族で、夫が喫煙者の場合を私なりに考えてみました。
妻と子供2人への受動喫煙被害も考慮した禁煙による経済効果は、
夫婦分を各2000万円、子供分を各3000万円と仮定して、
合計1億円以上になると勝手に想像しています。

ですから、1人の患者さんの禁煙成功は大きな喜びです。
町医者にふさわしい仕事と自負しています。
勝利の握手でお祝い申し上げ、タバコでは二度と会わないことを約束します。

300円のタバコの場合、63%にあたる約190円が税金です。
「しっかり納税してもらって短命になれば国の医療費削減政策にも貢献する」
と皮肉を言う方もいます。
確かに、喫煙者は優良納税者ですが、それ以上の医療費を消費しているとの指摘も。

タバコとお金の関係は、考えるほど大変複雑です。
しかし、時にはお金の面からも、真剣に考えてみるのも面白いでしょう。
きっと、タバコのない人生の方を選ばれることでしょう。