世の中におひとりさまは、沢山おられます。
また、おひとりさまの在宅手前の人も多い。
今日は、おひとりさまの自動車運転の話題です。
認知症の人は自動車を運転してはいけないことに
なっているはずです。
しかし認知症がありながら運転している人は沢山います。
よく、高齢者が高速道路を逆行したというニュースを
聞きますが、さもありなんという気がします。
明確な認知症でも車を運転して通院されている方はいる。
「どうやってここまで来たの?」
私は認知症気味の人には、診察室で必ずこう聞きます。
いろんな返事が返ってきます。
自分で歩いて来る人は少数派。
手押し車か車椅子介助が多い。
家族の車に乗せられても多い。
そして結構多いのが、自分で車を運転して来られる人です。
特に前頭側頭型認知症(ピック病)の方は結構、運転できる。
クリニックは警察じゃないので、とがめることができません。
柔らかく、「そろそろ運転は控えたほうがいいじゃないかな」
諭してみますが、驚くような答えが返ってきます。
「車を運転できないなら、もう通院できない」と怒られます。
助手席に乗ってきた奥さまも軽くうなずいています。
たしかに、老夫婦にとっては車が唯一の足であることが多い。
運転の切れ目が、通院・服薬の切れ目になることがあります。
せつない話です。
子供さんに相談しようにも、遠くにおられて、できない。
しかも本人も奥さんも車の運転継続を強く望まれている。
そんな中、車の運転を諦めさせるのは至難の業です。
ましておひとりさまの認知症の方はもっと大変です。
かくして知らない間に音信不通になる患者もいます。
おひとりさまが在宅医療を受けるようになるには、
実は沢山のハードルがあるのです。
大半は在宅医療になる前に、ご縁が切れています。
しかしどこかでまた誰かと新しいご縁ができるのでしょう。
それまでの間、無事に過ごされることを祈るばかりです。
おひとりさまと運転免許の話はそう単純ではないと思います。
医療は、こちらから押しかけることができません。
しかし時には押しかけたほうがいのかな、と思う時がある。
おせっかい医療の時代がもうすぐそこなのかもしれません。
高齢者や認知症の人の自動車運転は難しい問題です。
運転免許が社会とその人をつなぐ重要な糸の場合がある。
叶うならば、地域全体がその人の身になって考えないと。
大認知症時代、おひとりさま時代の運転免許問題は
社会全体でもっと議論しないといけないように思います。
とてもクリニックレベルで解決できる問題ではありません。