昨夜は、往診途上でテレビ朝日の某報道番組を
食い入るように見ていました。
福島県の33人の甲状腺がんの報道でした。
チェルノブイリの教訓を活かすべきだという暗示と、
少し違うのではないか、という憶測が交錯していた。
難しい報道でした。
詳しく検査をするから甲状腺がんが増えるのか、
本当に放射能被害によってがんが増えるのか、
まだよく分かっていない、という報道だったと思う。
子供が甲状腺がんになった母親のコメントが辛かった。
子供にがんができることが不都合な真実のような
言われ方をされることが辛い、といった内容でした。
充分に被害者かもしれないのに、まるでそんな立場を
無視されるかのような安易な励ましが一番辛いと告白。
その親子は、これからも不安と闘っていかれるのです。
子供の甲状腺がんの手術をされる医師の説明も紹介され、
何か悪いような報道でしたが、それは間違っていないと思った。
現場の医師も一生懸命に闘っておられるのです。
現場の医師は、子供の甲状腺がんを早めに手術しておくか、
少し様子を見ておくか、とっても迷って手術を決断された。
その判断は、私は正しいと思いました。
医師はいつも正しいわけではありません。
グレーゾーンで迷うことはいくらでもあります。
よく考えて、よく相談して結論を出すのが臨床現場というもの。
良いか悪いか、正しいか間違っているか
それが永遠に分からないということが時々あります。
これも医療の不確実性の範疇なのかなと思いながら見ていました。
確実に言えることは、こうした報道が不安を増幅している
という側面もあることです。
実際、昨夜の報道を見た人の受け取り方は様々だったでしょう。
真実を知りたい、とみなさん願います。
それが不安を解消する一番の方法であると。
しかしその真実が、相当な時間が経過しないと分からないのが怖さ。
しかし報道をしなければ、もっと不安が増大するのでしょう。
その意味では、「すごい報道だな」と思いながら見ていました。
車の中で番組を見終わってから、最後の一軒を訪問しました。
「復興はこれから」と新聞に書かれていました。
「放射能障害もこれから」だと思いました。
どちらも不安との闘いが続きます。
「不安」というストレスが、福島を覆っています。
それを吹き飛ばそうとすれば批難され、一方では、
不安を強調すれば、かえって不安を増大させます。
これからの日本は、原発再稼働を国民全体で考えるべきだと。
「どちらともいえない」という人が沢山いるのが現実ですが、
国民全体で、もっともっと議論したほうがいいと思いました。
終末期議論ももちろん大切ですが、エネルギー政策の議論も
もっと頑張ってしないといけないと思いました。
医療にも介護にも当然、大きな関係があります。
ところで、おそらく13日(もしくは14日)同じ番組の特集、に
先日の在宅医学会でご一緒した山口県の岡原先生が登場されます。
みなさん、笑って泣いて不思議な元気をもらってください。