《0143》 精神疾患患者さんの禁煙 [未分類]

先月から禁煙外来を訪れる人が増えています。
当院の場合、精神疾患を抱える患者さんもいます。

精神疾患をお持ちの方の禁煙治療は、精神科医と充分に
連携しながら、極めて慎重に行う必要があります。

まず、うつ病の方は、原則、禁煙治療の対象外です。
ニコチンで無理やりにドーパミンを出して、やっとの思いで
社会生活できている人が、禁煙するとうつ病が増悪するからです。

それでも、うつ病で禁煙を希望される人が来られます。
ひとくちに「うつ病」と言っても、重症から軽症まで様々です。
うつが軽症で、禁煙意欲が強い場合は、チャレンジすることもあります。

抗うつ薬が不要なくらい軽症な方ならやりますが、SSRI等を
飲んでいる方なら、ちょっと迷います。
薬を大量に飲んでいる方は、最初からあきらめます。

迷った挙句、精神科主治医に手紙を書くと、大体、
「してもいいですよ」と返ってきます。
「ダメ」と言われたことは一度もありません。

勝算ありと判断したら、顔色を見ながら禁煙治療を開始します。
具合が悪くなれば、いつでも中止できることを充分に説明します。
万一、うつが増悪して自殺したら取り返しがつきません。

うつの方の成功率が、一般の方より低いのは仕方がないでしょう。
禁煙したら、うつがよくなった人もおられました。
まあ、ケースバイケースといったところでしょうか。

統合失調症の場合は、どうでしょうか?
これも精神科医との連携が必須なのですが、案外、やってみると
予想より成績がよい印象です。

うつ病と統合失調症は、分けて考えるべきです。
統合失調症と禁煙治療は、相性がよいと思います。

問題はパニック障害です。
パニック発作をよく起こす人は、SSRIを飲んでいます。
そのような方には、敢えて急な禁煙治療を勧めません。
生活の質の方を優先した方が得策だと思います。

あと、何らかの精神疾患をお持ちの方は、禁煙治療を行うとしても、
開始する時期が大切です。
禁煙学において、そこは、まさに未開の領域です。