どうして、上野千鶴子さんの「おひとりさまの最期」の講演が
中止になる騒動になってしまったのか。
そのひとつには、警察沙汰になるからかも、と思われたのか。
「孤独死→警察沙汰」というイメージが焼き付いているのか。
それを行政が勧めるようなことはできない、と判断したのか。
もしかしたら、そう信じている市民が多いのかもしれません。
しかし何故、そう思うのでしょうか?
ひとつは、医師法21条の誤解にあると思います。
いつも言う医師法20条の次の条文です。
20条は看取りの法律、21条は異常死体の法律です。
「医者は行き倒れなどの“異常死体”を見たら24時間以内に
警察に届けなさい」というのが、医師法21条です。
ここでも24時間が出て来るから、話はややこしくなります。
20条の但し書きにも、「最後に診察して24時間以内に死亡したら
患者さんのところに行かないで死亡診断書を書いていい」とあります。
20条にも21条にも、「24時間」という文字が登場するのです。
しかし同じ24時間でも、意味はまったく違います。
20条は「行かないで死亡診断書を書いていい」、
だが、21条は「警察に届けなさい」です。
20条と21条が、いつしかごっちゃになって誤解されてきた。
「24時間以内に診ていない→警察に届けなければならない」は、
まったくの誤解ですが、都市伝説のように広がっています。
何度も書いてきましたが、私はおひとりさまでも普通に看取ってきました。
警察とは関係ないことを、ケアマネやヘルパーさんにも説明しました。
誰が救急車や警察を呼んでしまうのか分からないからです。
大切なことは、在宅主治医(かかりつけ医)が居ることです。
居ないと誰も死亡診断書を書けないので、それこそ本当に
警察医にお願いするしか方法が無くなります。
おひとりさまこそ、かかりつけ医が必要なのです。
そして見守ってくれる人を見つけておくことです。
両者が連携を取っていれば、最期まで自宅で暮らすことが可能。
上野さんの講演騒動を見ながら、医師法の知識が今後は市民にも
必要だと考え、看取りの法律について繰り返し書いています。
イザという時に慌てずに、この文章を思い出して頂ければ幸いです。