昨夜、痛みを訴えるがん患者さんの往診に呼ばれました。
講演を終えて急いて駆けつけると、その患者さんは
「もうあかん……」みたいな弱音を吐かれていました。
しかしお腹を触ると特別な所見はありません。
痛みの場所を聞いても、とても漠然としていました。
どこが痛みの中心なのか良く分かりませんでした。
本当に、がんに由来する痛みなのだろうか?
単に手術の跡の痛みなのだろうか?
いくつかの可能性を考えましたが、結論は出ません。
すでに、ロキソニン(消炎鎮痛剤)を何錠か飲まれていました。
その効果もはっきりしません。
ここは、麻薬の出番かな、と思いました。
しかし日曜日の夜に麻薬が出る薬局はありません。
当院は日祝も午前中はやっているので、お昼過ぎまでは
開いている調剤薬局がありますが、夜は全部閉まります。
実は、こんな経験が何度もありました。
土曜日と日曜日の夜になると痛みが強くなるのです。
それを見越して予め麻薬を処方しておく場合もあります。
しかし患者さんやご家族は、「麻薬」と聞いただけで
驚きますし、それに麻薬の薬代を先に払うことになります。
やはり必要なその時にならないと、処方しにくいのです。
「大丈夫、死にませんから!」
敢えて、「死にません」と言い残して笑って帰りました。
1時間後、ご家族からメールを頂きました。
「なぜか、あれから痛みが和らぎました」とのこと。
痛みには、肉体的な要素と精神的な要素が混じっています。
100%肉体的という場合もあるが、半々のこともあります。
肉体的な痛みの方だけが敏感になっていることもあります。
その患者さんは、精神的な要素も多分にあったのでしょう。
しかし肉体的な要素も半分以上はあるはずです。
今日は、麻薬を持って再度訪問します。
昨日は、食事を摂れません。
痛みも主な原因なのでしょうか。
飲むタイプの麻薬から開始したいのですが貼るタイプを選択。
しかし、飲むタイプの液体の頓服麻薬と座薬タイプの両方を処方。
レスキューといいます。
土台は、貼り薬タイプの麻薬で作ろうかと考えました。
麻薬を開始する場合は、吐き気対策と便秘対策を平行します。
吐き気は個人差があるので、全く感じ無い人もおられます。
便秘も様々です。
在宅ホスピスは、痛み止めの処方が命綱です。
痛みを止められないとヤブ医者と言われても仕方がありません。
家族と訪問看護師と毎日連絡を取り合って、情報収集もします。