《1445》 麻薬による呼吸抑制 [未分類]

末期がん患者さんに貼り薬の麻薬を開始して
1日が経過しました。
夜なかに頓服の麻薬を2回、使ったそうです。

訪問看護師さんから呼吸が止まりそうだとの電話。
急いで駆けつけましたがゆっくり呼吸をしている。
麻薬による「呼吸抑制」でした。

麻薬を使うと、呼吸数が減ります。
時に、無呼吸が生じます。
しかしただちに呼吸が止まる訳ではないことを説明。

眠気も出ていました。
眠気の出現は、個人差があります。
全く眠気が出ない方もおられます。

その方は、昼間もずっと寝ているようでした。
しかし私が呼びかけると目を覚まし会話はできます。
傾眠傾向と呼び、昏睡状態とは区別します。

幸い痛みはかなり和らぎ、顔のしわがとれました。
しかし依然として、食事がほとんど摂れません。
従って下剤と吐き気止めは全然飲めていません。

「○○さん、元気ですか?」と問いかけると、
「元気でーす!」と返ってきました。
ご家族一同、目を丸くして笑いながら驚いていました。

便秘や吐き気の説明はしましたが、
呼吸抑制や眠気の説明は忘れていました。
副作用を沢山説明すると家族の不安を煽ることがあるので。

呼吸抑制を見たら、家族は怖がります。
呼吸数がかなり少ない状態を普通の人は見ません。
私自身は、「ああ、効いているな」という感じです。

ただ呼吸抑制があるので麻薬の増量は今はできません。
鎮痛補助薬を上乗せしたくても飲み薬なので飲めない。
その人の緩和ケアに点数をつけたら、60点くらいか。

いきなり100点は難しいです。
60点でもよし、と判断しました。
0点、30点よりずっとましです。

いきなり100点は無理です。
60点から開始して、70点、80点を目指します。
そのためには、麻薬などのお薬だけとは限りません。

アロマテラピーが有効であることが分かっています。
訪問看護師がアロマオイルを買ってきてマッサージも。
これは、代替補完療法とも呼ばれます。

その人の体の中におそらく何キロもがんがある。
がんが体力を日々低下させます。
ろうそくの火が、少しずつ小さくなる感じです。

残された日々は限られているのでしょう。
しかしそれは終わるまでは、誰も分りません。
それまでの日々を、少しでも笑って過ごしてもらいたい。

そのために、我々は「麻薬」という武器を持っています。
文明の利器を上手に使えば、笑顔に変えることができる。
それが「在宅ホスピス」の遣り甲斐です。