《1447》 根強い鎮痛薬への偏見 [未分類]

毎日、医療用麻薬を処方します。
いや正式には、オピオイド鎮痛薬と言います。
ようするに、モルヒネ系統のお薬のことです。

特にがんの専門病院から在宅医療を依頼された場合、
専門医はがんの治療に夢中で痛み止めを忘れている。
あるいは弱い痛み止めだけでお茶を濁されています。

痛すぎて、食事が摂れないことがよくあります。
そんな時、オピオイド鎮痛薬を使えば効きます。
しかしその処方に抵抗する人が結構おられます。

麻薬やオピオイドに対する根深い偏見があるため
強く拒否されて、難儀することが時にあります。
都市伝説のように、現在も残っているのです。

オピオイドで命が縮まると考えているひとが
日本人のなんと3割、もいるそうです。
そもそもそんな研究はあるのでしょうか?

実は国内外の論文で、オピオイド鎮痛薬で
寿命は縮まらないことが報告されています。
ですから全くの“誤解”であり“偏見”なのです。

その誤解を解くのは、結構大変な作業で時間がかかります。
特に病院で提案されなかった薬を、在宅でお会いして、
すぐに提案するのは、実はいささか勇気が要ります。

患者さんやご家族は、「病院=優秀」「町医者=劣っている」
ないしはヤブだと思っている人が大半です。
現在でも、まだ病院信仰が根強いのです。

痛みを早く取って元気にしてあげたい。
そのためにはオピオイド剤(麻薬)が必要です。
しかし、まず根強い偏見と闘わなくてはならない。

そうしたジレンマを抱えながらオピオイド投与が
始まることは決して稀ではありません。
そして開始1日で、疑惑は嘘のように晴れるのです。