《0145》 抗生物質を使い過ぎると耐性菌が生まれる [未分類]

多剤耐性アシネトバクター菌は、命を奪い得る、恐ろしい細菌です。
しかし、病気で寝込んでいる人や、手術後で免疫能が低下している人を
狙い撃ちしますので、健康に活動している人には感染しません。

なぜ、このような多剤耐性菌が生まれるのでしょうか?
それは、単純な話です。
抗生物質を使うから、耐性菌が生まれるのです。
抗生剤の乱用が多剤耐性菌を生む、と考えられています。

では、適切に使うと、本当に生まれないのでしょうか?
否、使う限りは生まれるものだと思います。
両者の関係は、「永遠のいたちごっこ」であり、
「宿命」と言ってもいいと思います。

抗生剤の発見で、多くの命が救われました。
一方、耐性菌も出現し、命が奪われました。
負の側面も必ずあるということです。

「人間は細菌やウイルスとの闘いには絶対に勝てない」
とよく言われます。
私は、真理だと思います。

我々は、まさに抗生物質に囲まれた生活をしています。
風邪で病院に行くと、抗生剤が処方されます。

処方しないと、怒る患者さんも多い。
医者の間では、風邪に抗生剤を処方する医者は、「ヤブ」ですが、
患者さんの間では、処方しない医者が「ヤブ」のように言われます。
説明が面倒なので、ついつい、抗生剤を多用する文化があります。

医療用の抗生剤だけではありません。
多くの養殖魚や豚や牛の飼料にも、多量の抗生剤が使用されています。
後者の抗生剤使用量の方が問題が深刻かもしれません。

いずれにせよ、我々日本人は、抗生剤まみれの生活です。
ですから、多剤耐性菌が出て、当然!なのです。

ウイルスにおいても同様です。
タミフル耐性インフルエンザ、インターフェロン耐性C型肝炎ウイルス、
ラミブジン耐性B型肝炎ウイルス、いくらでもあります。
細菌やウイルスは、やられたら、姿を変えて、やり返す。

帝京大学に、なぜか警察が入りました。
院内感染と警察は関係ないと思いますが。
今後の動向を注目しましょう。

感染症対策には莫大な費用がかかります。
しかし、医療費削減政策は、その余裕を与えていません。

警察の取り調べで、問題が解決するとは思えません。
私は、日本人の「抗生剤好き文化」を変えない限り、
多剤耐性菌問題は、解決できないと思います。
広い視野で帝京大学の出来事を、冷静に検証すべきです。