《1459》 緩和ケアと無縁の人生もあるけれど…… [未分類]

日々、いろんな人の最期に立ち会っています。
がん、認知症、老衰、神経難病、肝硬変、心不全……
さまざまなご病名の看板を背負って旅立たれます。

「末期がん=モルヒネ」ではありません。
半数近くの人はモルヒネを要しませんでした。
がん以外も、まったく痛み止めを使わなかった人も。

その中で何らかの緩和ケアを必要とする人がいれば、
まったく必要としなかったひともいます。
緩和ケアが全く要らなかった完璧な平穏死もあります。

トイレで排便後に死ぬ死に方です。
排便前後は、血圧がかなり上下動します。
その中で、致死性の不整脈が出るのです。

その場合、ほぼ瞬間的に心臓は鼓動を停止します。
間もなく呼吸も止まります。
おそらく5分以内にそのようなことが起こるのです。

「雷に打たれたような死に方」であると感じます。
高齢の在宅患者さんが風邪で少し弱った時などに、
このようなことが起きる確率が高まります。

直前までいつものように話をして歩いてトイレに行って
そこで死にますから、残されたひとはとても驚かれます。
介護している家族は、あっけない幕切れに腰が抜けます。

しかし現実に、そのようなことが起きます。
独居で発見が遅れれば、孤独死と呼ばれます。
今後、このような最期が増えると思います。

実は今朝も、とある知らせで起こされ、往診しました。
喫茶店で目覚ましコーヒーを飲みながら書いています。
その方は、愛する方に見守られながらの突然の旅立ち。

お顔を眺めながらなんて幸せな旅立ちかと思いました。
超高齢の要介護4ですから、仕方がありません。
笑顔のまま、逝かれました。

その方は、一生、緩和ケアとは無縁でした。
要介護状態ですからピンピンコロリなのか分りません。
しかし亡くなる瞬間まで確かにピンピンしていました。

こんな亡くなり方もある。
高齢者には、これから増えるだろう。
緩和ケアとは無縁の逝き方。

しかしそんな人は5%しかいないし、第一、選べない。
なんとも羨ましい逝き方。
そして、願っても叶わない逝き方。