《1460》 口の渇きをどう緩和する――待つことの大切さ [未分類]

胃がんや大腸がんでがん性腹膜炎を起こしている
人を在宅医療で診ることがよくあります。
お腹は、腹水と腸閉塞でパンパンです。

お腹の痛み以外に「口が渇く」と訴えられます。
お腹には水が貯留しているのにそれ以外は脱水です。
舌を出してもらうと、乾いて白い苔が覆っています。

お腹は水分過剰なのに、体全体は水分不足。
しかも口からはほとんど水分も栄養も入りません。
さてどう対応するか。

脱水だから点滴、というお医者さんが大半でしょう。
私はこのような場合、点滴はしません。
一言でいうと、「待ち」ます。

待つと、脱水は進行します。
しかしお腹の水は減少します。
脱水より腹水の減少を優先するのです。

実際には、ステロイドの注射、利尿剤の内服か注射、
麻薬を貼るタイプに変更するといったことはします。
しかし基本的には、自然に任せて3日「待ち」ます。

腹水が減少すると腸管が動き出します。
便やガスが少し出て、少し食べ物が入ります。
アイスクリームや果物などが少し食べられます。

あと、口腔ケアを行います。
口の中をきれいに掃除して、うがいをしてもらいます。
小さな氷の塊を頻回に口に入れてもらいます。

口の渇きは自然に入っていく水分で幾分相殺されます。
乾いた石に水が浸みこむような感覚です。
これが私の口の渇きへの対応です。

沢山点滴すると、腹水は増加し完全な腸閉塞に至ります。
食べるどころか吐き続け、痛みや呼吸困難は増強します。
口の渇きは改善されず、却って悪化します。

私は、口から食べることを最優先します。
そのために「待つ」ことを知っています。
そして口腔ケアを最優先します。

《PS》
今日は、以上のようなことを関西学院大学の学生さんや
兵庫医科大学の医学生さんに講義しています。
いくつかの学校の教員もやっています。