成功大学10階にある緩和ケア病棟は、元々の一般病棟を
改装して緩和ケア病棟として開設されたもの。
がん病棟と隣り合わせになっています。
ベッド数は20床で個室は2室のみで、あとは2人部屋。
平均在院日数は1週間程度だそう。
巨大な病院の中では決して目立つ存在ではないようです。
緩和ケア病棟で1日を過ごした感想を、3点挙げるならば、
- ボランテイアが活躍する病棟、
- そこで亡くなった方の遺品や寄付で成り立っている、
- ハードよりもハート、そして頭でできている空間
かな。
廊下には、「恩と縁」と書かれた板が掲げられていました。
たしかにご恩とご縁で繋がっているのが世の中。
このホスピスも同じ理念でした。
廊下には、他にも「患者の義務」が掲げられていました。
その上に「権利」も掲げられていますが「義務」は初めて見た。
モンスター患者にならぬよう、戒めているようにも感じました。
廊下にはうがいができるようにウーロン茶が置かれていました。
そうした院内感染予防には、それなりに気を使われていました。
若い看護師たちは、活き活き、と働いているように見えました。
あと、カウンセリングルームの充実でしょうか。
家族カウンセリングをとっても重視されていました。
みんなが納得がいくまで何度も何度も話合いを重ねておられました。
家族の前では言えない場合は、患者と主治医だけで話すことも。
あるいは関係者が集まって専門的に検討をする場合もあります。
その様子は、別室のモニターTVで家族が見られるようにもなっていた。
緩和ケアがとってもオープンに行われているとの印象を受けました。
ナースステーションには水槽が置かれ、お魚さんが泳いでいました。
また各病室には必ず時計とカレンダーが掲げられているのも印象的。
病棟内には寝たまま入れる浴槽があり活用されていました。
ネブライザー等の呼吸器やリンパ浮腫への緩和ケアの器具も充実して
いて、がんの末期の人でも、吸引器はまず不要であるとのことでした。
また床ずれ防止の特殊なマットを開発し床ずれゼロを続けていると。
大学院の看護師たちも勉強に来ていましたが、臨床と教育がまさに
一体となっているようでした。
ボランテイアさんたちの部屋では、自分たちで料理もできます。
看取りの時には、立ち会いや見送りもします。
家族用の部屋も充実していて、映画も見られるし、宿泊も可能です。
病棟全体に美術品が溢れて、さながら美術館のようでもあります。
旅立った患者さんが残された芸術作品がいつまでもみんなを癒す。
まさに、「恩と縁」だと感じました。
以上はおそらく日本の緩和ケア病棟も同じようなものでしょう。
しかし以下は成功大学らしい、いや趙可式教授らしい試みでは。
緩和ケア病棟は、かなりの「寄付」で成り立っているそうです。
病棟の入り口には、木の絵があります。
それぞぞれに大小不動の葉っぱがついています。
よく見ると各葉っぱに名前が刻まれています。
実は葉っぱの大きさは、寄付金の大きさを表しているそうです。
開設当初は1本だった木が、現在は3本にまで増えていました。
旅立った後にも、芸術作品や葉っぱとして残されているのです。
(続く)
PS)
明日13時から、尼崎市のアルカイックホール・オクトで
第13回生と死を考える市民フォーラムが開催されます。
今回、私の平穏死に関する講演のあと、女優の木内みどりさんが
名作映画「大病院」やドラマ「巻子の言霊」などいのちに
関わる作品への関わりを通じてのご講演をなさいます。
入場無料です。どなたでも気軽に遊びに来て下さい。
http://www.drnagao.com/img/lecture/20140510shiminform.pdf