《1487》 実は「患者の権利法」だった。 [未分類]

台湾の法律は、思いのほか複雑でまだ充分に理解できていません。
いくつかの書類は、日本語訳をお願いしました。
いずれ詳しくご紹介します。

以前、朝日新聞本紙に「誰のための法制化?」と題した記事が
載っていたことをご記憶の方はおられるでしょうか?。
私のことを書いた記事の見出しとしてわざわざ問うていました。

正直な話、私自身は、何も困っていません。
在宅医療で多くの方の穏やかな最期を診させて頂いていますが、
本人やご家族の話合いで人生の最終段階の医療を決めています。

実は困っているのは病院のお医者さんです。
病院ではさまざまな医療処置ができるし、どこまでも続けられる。
それだけに、さまざまな「行き違い」が起きるのだと想像します。

人の目も多く、誰かが内部告発するかもしれない。
同じ病院内の医療者であっても価値観は千差万別です。
倫理委員会のような組織でも議論されます。

「平穏死・10の条件」など平穏死と題する本を5冊書いていますが、
在宅だと平穏死できるが、多くの病院では難しいという話なのです。
患者さんの希望が通りにくいのは、訴追されるのが怖いからです。

もし訴追されたら、医師としての諸活動に多くの支障が生じます。
それは困るのでどうしてもフルコースをやらざるを得ないのです。
決して、好きでやっているわけではないことは知って欲しいです。

ところで台湾の法律を眺めていて、気がついたことは
第十条と第十一条で、医師の罰金規定などが定められていること。

第十条 医師が第七条に違反する者は台湾ドル6万円以上30万円以下罰金され、一か月以上一年以下停業処分または免許証を取り上げることになる。
第十一条 医師が第九条に違反するものは台湾ドル6万円以上30万円以下罰金される。

患者さんのリビングウイルや家族の希望に逆らうと、医師免許取りあげに。
「安寧緩和医療条例」は、患者さんや家族の権利を守るための法律である
ことは明らかです。

つまり台湾の「安寧緩和医療条例」は、まさに「患者の権利法」。

「医師の免責法」ではなくて、あくまで「患者の権利法」。

6月8日(日)に検討予定の「活かされなかったリビングウイル」の
事例は、もし台湾なら、罰金か医師免許停止か取り上げになるのです。
「誰のためのリビングウイルなのか?」という話になるかも。

「誰のための法制化?」
という問いに対しては「患者さんのため」としか言えません。
まさかお医者さんの免責のための法律では、決してありません。

どんなお医者さんでも訴追されないためには、内心過剰であると
思っても、多くの延命治療をせざるを得ないことが多くあります。
お医者さんは、自分の保身のために延命治療をやっているのです。

患者さんの利益と自分の保身、のどちらを優先するのか?
患者さんの利益より自分の保身を優先せざるを得ないのが、現実。

もし患者さんの利益を叶えると、あとで家族が自分が訴えるかも。
患者さんの利益を保障する法律が無いからそうならざるを得ない。

法制化議論は医師の免責のためではないことは、言っておきたい。、
「患者さんの権利」を守るためであることは明らかだと思います。

「人生の最終段階においてあなたが選ぶ権利」をまず獲得しませんか?
これが現在、国会で行われている終末期議論の本質だと思います。

《PS》
先日、北海道で講演した時に多くの方から、PHP研究所から先日
出版された「平穏死できる人、できない人」という拙書がとても
分り易い本であるとの、たいへん嬉しい言葉を頂きました。

できるだけ分かり易く書いた本ですので、参考にしてください。