この時期でもまだインフルエンザの方がいます。
本当にしつこいな、なんて思い診察しています。
あと今週に、多いのは、嘔吐と下痢の方です。
ノロウイルス感染かもしれません。
しかし敢えて、そうは言いません。
言えば、パニックになる方がいるから。
感染性胃腸炎、ウイルス性胃腸炎、胃腸風邪、
などの診断名を使いながら説明をします。
「吐き下し」という言葉で説明する場合もあります。
ノロウイルス=とても怖いもの、死ぬかもしれないもの
と、刷り込まれている人がとても沢山おられます。
それを聞いただけで過呼吸になった人もいました。
学生さんであれば必ず親から改めて問い合わせがあります。
学校の先生からも、あとであれこれ聞かれます。
治っても、「治癒証明書」を求められることもあります。
高齢者であれば、子供さんからあれこれ質問されます。
施設入所者であれば、施設職員がパニックになります。
とにかく、ノロ・・・と口にすると大変なことになる。
ですから、「ノロ」を我慢して、「ウイルス」と言います。
するとそんなに大騒ぎになりません。
大半は2食絶食程度で改善します。
便のウイルス検査は一般の方は、保険適用がありません。
もちろん検査に出ない場合(偽陰性)もあります。
また仮に「ノロウイルス」と分っても特効薬はありません。
「吐き下し」は、おそらく大昔からあったのでしょう。
100年前、50年前なら正露丸で対処していたはず。
しかし近年になって、ウイルス感染と分った。
さらに最近になって「ノロウイルス」という名前がついた。
特殊な名前がつくと、人間は「恐怖」を覚えます。
「インフルエンザウイルス」も同じでしょう。
西洋医学で病態の解析が進むほど、難しい病名がつきます。
それと同時に、とても特殊で難しい病気である印象が出る。
「ボケ」が「認知症」になったことと、どこか似ています。
安心させようと「ボケ」や「吐き下し」という病名を告げて
も、次の医者で「認知症」や「ノロウイルス」と言われます。
すると「診断名が違う」と怒鳴りこんでくる方もおられます。
今時の患者さんへの説明は、難しすぎてもいけませんが、
幼稚すぎても後で怒られることがあるので注意が必要です。
また高齢者であれば、常に「遠くの長男、長女」を意識した
説明をするのが、開業医の務めであると思い診察しています。