《1499》  「多死社会」って書けない医療者 [未分類]

昨日の質問の回答です。
年間死亡者は、年々、増えています!!

しかし「減っている」と回答した医師達にその理由を
聞いてみると「医療が発達しているから」と答えます。

「医療が発達している=死なない」ではないのですが、
なんとなく、死ににくいという印象があるようです。

「人は死なない」という東大の偉い先生が書いた書籍を
そう考えた理由に挙げた若い医師もいました。

回答ついでに、「多死社会」について説明も加えようとします。
しかし念のため「多死社会」を書けるかどうか聞いてみます。

すると「タシシャカイ?」
「どんな字を書くのですか?」と返ってきました。

「平穏死」も同様です。
若い医師から「ヘイオンシってどんな字を書くのですか?」と。

「タシシャカイ」が分かるという人にはどんな意味か聞いてみます。
すると、「やはり良く分かりません」という医療者が大半です。

現在、日本では年間120万人が亡くなっています。
年々増えていて近い将来、160~170万人まで増えるそうです。

それが2025年ないし2030年と言われています。
多死社会のピークです。

実は私は、以上のことは医療者なら当然誰でも知っているものと
認識して、これまで沢山の講演をしてきてしまいました。

しかし、位の高いお医者さんに「死亡者は減っている」と言われ、
自分の大前提が狂っていたことに今頃になって気がつきました。

「平穏死」について分り易く説明するだけで1時間はかかります。
たいていの1時間講演は、イントロだけで終わってしまいます。

あるいは1時間、早口で飛ばしていろんな話をすることもあります。
するとあとで「よく分からなかった」と言われ、また反省します。

いずれにせよ、超高齢化、死亡者数増加、終の住処、
そして多死社会などが講演の土台であるのですが・・・

医学教育や生涯教育の中で、死に関する教育はほぼ皆無です。
治すことには一生懸命でも、死ぬことは全く考えないのが実情。

先日、ある医学書専門の出版社を訪問する機会がありました。
数えきれない数の専門書がズラーっと並んでいました。

しかし「死」に関する医学書や雑誌は皆無でした。
改めて、唖然としました。

「死」がタブーであるのは、一般社会においても
医学界、看護界においても、同じなのが現状です。

拙書を「多死社会」や「平穏死」に関する入門書として、
多くの医療者に読んで欲しいなあ、と改めて思いました。