《0150》 昔、公害喘息、今、アスベスト中皮腫の町 [未分類]

尼崎といえば、昔は、公害喘息の町として有名でした。
現在でも、公害認定患者さんが、毎日、受診されます。
しかし、現在は、アスベスト問題の方が有名になりました。

アスベスト(石綿)を吸い込むと、40年も経過してから
中皮腫としての症状が出ます。
こんなに後になってから発症するなんて、怖い病気です。

何人かの悪性中皮腫患者さんの最期に立ち会ってきました。
様々な闘いを終えて、やっとの思いで自宅に帰った人ばかり。
家に帰った途端、皆さんのホッとした笑顔が印象的でした。

肺がんと悪性中皮腫は、似ているようで全然異なる病気です。
肺がんは、肺の病気。
悪性中皮腫は、胸膜と言って、肺の外側にある胸膜の病気。

肺がんで、胸水が貯まれば、かなり進行した状態です。
しかし、悪性胸膜中皮腫の場合は、大量の胸水が初発症状です。

かたや末期症状、かたや初期症状(かもしれない)と、対照的です。
肺がんは、在宅ターミナルケアの中でもちょっと異質です。
モルヒネ製剤の進歩で、痛みの治療は格段に進歩しました。

しかし、呼吸苦の緩和は、完全には克服されていません。
最期の最期に呼吸苦のあまり、夜中に救急車を呼ばれた方もいました。

一方、悪性中皮腫の終末期は、実に静かな方ばかりでした。
小さな浅い呼吸が、かなりの期間、続きます。

亡くなる寸前の呼吸と間違えたことが、何度かありました。
虫の息の状態で、1~2週間も経過したこともありました。
家族と触れ合える時間が多い独特な病気だと思います。

さて、アスベストは、中皮腫以外に、肺がんも引き起こします。
しかし、タバコは、アスベストよりもっと強い力で肺がんを起こします。

世間の方の、アスベストの怖がり方と、タバコのそれはどうでしょうか。
皆さん、アスベストには敏感で、タバコにはとても寛容です。
ダイオキシンも同じような印象を持っています。
ちょっと不思議です。

公害喘息の町、アスベスト中皮腫の町から、禁煙を発信します。
まさに「呼吸器の町」だからこそ、ここから禁煙ののろしを上げたい!
そんな思いで、毎年、高校生の禁煙講座を担当しています。