《0160》 最近のエイズ動向 [未分類]

一昨日、東京大学医科学研究所の岩本愛吉教授による講演
「グローバルな感染症としてのHIV」を拝聴しました。
今日は、日本の最新エイズ事情について少しご紹介します。

1981年に、最初にエイズが報告され、はや21年が経過しました。
当初は、不治の病のような印象があったかもしれません。
1993年、映画「フィラデルフィア」で、トムハンクスが演じたように。

しかし現在は、適切な時期に診断し、適切な治療を行えば、
HIVの増殖は抑えることが可能な病気となりました。
お薬もたいへん進歩し、何種類かのお薬を重ね飲みします。

HIVに感染すると、2~3カ月間の急性感染期があります。
その後、数年間の無症状期を経て免疫不全期(エイズ)に至ります。

無症状期に、HIV感染を見つけ出し、お薬を飲むことで、
死亡率は一気に減らせます。
問題は、どうやってHIV感染者を見つけ出すかです。

現在、世界中で3300万人のHIV感染者がいて、これまでに、
300万人が亡くなっているそうです。

お国によって、エイズをめぐる事情はかなり異なるようです。
アメリカはほぼ横ばい、アフリカでは増加。
アジアでは、インド、中国、タイで、HIV感染者が多い。
インドネシア、パプアニューギニア、ベトナム、フィリピンで増加。

日本のHIV感染者数の、正確な統計はありませんが、有病率は、
人口10万人に対して、11・5人と推定されています。

献血者の統計では、10万人あたり、5~6人のHIV陽性が出ます。
血液製剤による薬害エイズ患者さん1439人を除けば、
性行為によるHIV感染者が、大半であることは有名です。

日本でのHIV感染者数は、現在も増加しつつあります。
性行為といえば、「ホモセクシュアル」を想像しがちですが、
同性と異性と、両方と性的関係を持つ人(MSMと言います)に多い。

MSM700人に対して、異性間のみの性交渉感染は200人です。
MSMとは、男性が、男性・女性と性的関係を持つ場合が大半。
女性が女性とのみ性交渉を持つ場合のHIV感染は、なぜか極めて
稀だそうです。

性行為感染症患者さんに、HIV検査を勧めるのが効率がよい。
また、梅毒反応陽性者にも必ず、HIV検査を勧めてほしいとも。
日本の新規HIV感染者は、都市部のMSMに集中しているそうです。

尼崎市では、保健所で無料でHIV検査が受けれます。
しかも、匿名検査です。
「めんどくさい」と、当院で自費で検査をされる方も時々おられますが。

まだまだ、偏見の多い病気です。
松たか子さん主演の映画「告白」には、13歳の子供たちがエイズを
どのように捉えているのか、見事に描かれています。

神戸では、三宮センタープラザという街中でHIV検査をしています。
午後1時までに行けば、その日のうちに検査結果が判明するそうです。
これも匿名検査です。

1992年、神戸は、「HIVショック」に見舞われました。
HIVも震災も新型インフルエンザも、なぜか神戸発でした。

JR事故もあったし、阪神間は「本邦初」が多い場所……
災害医療も、危機管理も、安全管理も、感染症対策も。
ちょっと、脱線しました。

都市部のMSMの方は、ぜひ、HIV検診を受けてください。
当院でも、もっと積極的に、HIV検診を啓発しようと思います。

まだまだ、忘れてはいけない、そして侮れない「HIV」です。