《1606》 「女医さん」の時代 [未分類]

ある講演会後の懇親会で一人の女医さんに話しかけられました。
てっきり下手な講演を怒られるのかと一瞬、背筋が伸びました。
いくつになっても、女医さんと婦長さんは正直、怖い存在です。

おそらく、いくつかのトラウマがあるのでしょう。
研修医時代に怒られた婦長さんは今でも鮮明に覚えています。
しかし、女医さんが怖い理由は自分でもよく分かりません。

そうそう、先週、30年ぶりの大学の同窓会がありました。
来ている女性が10人位いましたが、全員、女医さんです。
思い返すと女子医学生の頃から近づくのが怖かったような。

医学生時代も同級生の女性と話をしたことはほとんど無かったが、
30年経ってもやはり、その習性(?)は変わっていませんでした。
6時間一緒に飲んでいて女医さんと話した時間は合計1~2分位。

みなさん結婚や子育てなどを終えてひと段落する年齢です。
高齢者施設で外来や在宅で頑張っている同級生がいました。
結局、同じフィールドで働いているのです。

さて、話しかけてきてくれた女医さんは、結婚して子供を産んで
子育てをしながら、女医活動も細々と続けられてきたそうです。
医者になった当初は当然、専門医としての研鑽に必死だったそうです。

子育てが一段落してからは施設の嘱託医や在宅医療など、一環して
高齢者の地域医療の道を、地道に歩いて来られたそうです。
老人医療や認知症医療に関しては、私より豊かな経験がありました。

しかし病院で行われている先端医療にどこか後ろめたさを感じてきたと。
ここは、なんとなく私も分かります。
病院の専門医と話をすると、専門外のことを知らないことに驚くとも。

子育ての傍らに積み重ねてきた高齢者医療の経験や知識や努力は
間違っていないことが講演を聞いて分かった、みたいなことを言われました。
怒られているのではなく、むしろ誉められていると知り少し安心しました。

考えてみると、医者の3割が女性の時代です。
医学部入学者の半数が女性という大学もあります。
東京女子医大は別ですが。

しかし、医療界は政界と同じで男性社会です。
病院長や医師会長などの要職も、ほとんどが男性です。
これだけ女性が多いのに、いまだに“女医さん”と呼ばれています。

大きな病院では、女医さんが働き易い環境作りに必死なようです。
当直免除、早退可、子育て休暇、託児所の完備、などなど。
それでも子育て女医さんには、厳しい職場環境だと聞いています。

私はその女医さんのように、地域の開業医や中小病院の外来や
在宅医療にこそ、女医さんの大きな需要があると思っています。
医師の職場はなにも大きな病院だけとは限りません。

高齢者医療で大切なことは、継続性、認知症の理解、思いやりだと思います。
それには、女医さんがピッタリだと思っていましたが、その女医さんとお話を
していてますますそう思いました。

別に偉くなくても、有名でなくても、専門医や医学博士がなくてもいい。
努力家で優しくて男性が及びもつかない位、感動的な女医さんもいます。
こう書いたところで故・矢島さっちゃん(祥子)先生を思い出しました。

 http://blog.drnagao.com/2010/11/post-1091.html

当たり前ですが、女医さんには男性医師には無い魅力があります。特に高齢男性
に対する優しさ、おおらかさ。人気の面では、オッサン医師はかないません。
これからは女医さんが地域で活躍する時代だと改めて思いました。