《0162》 日常診療の中に潜む片頭痛 [未分類]

日本人の4人に1人は頭痛持ちと言われています。
連日、何人かの頭痛患者さんが受診されます。
頭痛は、日常診療で遭遇することの最も多い症状です。

命に関わるものからそうでないものまで、様々です。
教科書的には、肩こりに由来する筋緊張性頭痛が結構多いようです。
しかし、多くの「片頭痛」が見逃がされている可能性が、指摘されています。

片頭痛の患者さんは、頭ではなく「眼が痛い」と訴えることがあります。
これは、異痛症と言って三又神経の興奮症状であると説明されています。
そのような患者さんは、帯状疱疹ウイルス抗体価が上昇していて、
ヘルペスウイルス(HSV)との関連が注目されています。

「眼鏡の縁が肌に当たって痛い」とか、
「コンタクトレンズがコロコロする」と言われる人もいます。
「異様な肩こり」と聞いて、筋緊張性頭痛と誤診せぬよう注意を要します。

片頭痛の患者さんは、痛い方の頭を上にします。
また、男性ならネクタイをゆるめ、女性ならブラウスのボタンをはずして
私の前に現れます。

大雑把に言うと、若い女性の頭痛には、片頭痛が多く、40歳以上の女性の
頭痛には、薬物乱用(鎮痛剤の飲み過ぎ)が、多いと思います。

「若い頃、私は頭痛で吐いたことがあります」と言われると、
「この人は元・片頭痛患者なのかな?」と疑います。

耳鳴りや目まいを訴えると、やはり「片頭痛だ!」と確信します。
頭痛に薬物(痛み止め)を多量に使うと、頭痛の本質がマスクされます。

片頭痛をごまかしていくと、やがて中年になり「耳鳴りや目まい」となります。
ちなみにこれは「頭鳴」と呼ぶそうです。
脳波では、後頭葉から側頭葉の過敏性の所見が見られます。

「三又神経痛のあと1年以内に、脳梗塞を発症するリスクが高い」という、
衝撃的な論文が台湾から出ました。
これは三又神経内でHZVが暴れるからでしょうか?
とにかく、片頭痛を早期に診断して神経の炎症、脳の興奮をいち早く
おさめることです。

先日、ゴルフの素振りを1回してから激しい頭痛が続くと訴える若い
女性が入ってこられました。
この方は、直感した通り……「低髄液圧症候群」でした。

「ちょっと頭痛が……」と言って元気に入ってきた方が、CTを撮ると、
クモ膜下出血だったこともありました。

別に、少し熱があった方は、入院させると「髄膜炎」と判明しました。

町医者といえども、頭痛の診断はたいへん重要です。
手を抜けません。
頭痛診療は、本当に奥が深くて興味深いのです。