《1636》 完治する可能性のある進行胃がんを放置したら? [未分類]

今日の話は、「実話」です。

まぎらわしいですが、本当に本当の話です。
今日も、胃がんの話です。

86歳の男性が胃の痛みを訴えて、あるがん拠点病院を受診されました。
胃の真ん中に、数cmの2型の胃がんが発見されました。
組織型は、低分化型腺がん(タチが悪いがん)でした。

諸検査では遠隔転移はなし、でした。
根治切除可能と判断され、外科手術を強く勧められました。
しかしその男性は、手術を受けないという選択をされました。

この方は、放置療法の本の影響ではなく、自分の哲学で決めておられました。
以前から、歳を取ってがんが発見されても、放っておこうと決めていたそうです。
しかしその割には、不安にかられて私のクリニックを受診されたようです。

その前に、セカンドオピニオンを受けに行かれたが、同じ結果だったと。
私も同じ意見では芸がないなと思いながらも、外科手術を勧めました。
しかし、ご本人の「手術はしない」という意思は変わりませんでした。

その後も、2週間ごとに判で押したように
私の外来にやってこられました。
補中益気湯という漢方薬とタケプロンという制酸剤を投与するだけでした。

男性は、「不安で不安で仕方がない」、と正直に言われていました。
私は「だったら手術すればいいじゃない」と毎回、言っていました。
外見はどう見てもお元気で、歳より10歳は若く見えいつもスーツを着ていた。

私の講演には、まるで追っかけのようについて来られました。
がん、認知症、平穏死、在宅医療などの話題全てに興味があるようでした。
毎回、一番前に座られるので、同じ話をするのがやりにくかったことを思い出します。

とても元気で、禁煙外来にも来られて、禁煙に成功されました。
今さらながらではあるのですが、一応禁煙を応援し祝福しました。
ただ何度聞いても、手術をしないという選択だけは断固変わりませんでした。

ご家族も遠方から何度かクリニック等に来られました。
手術をせずに自然に任すという話を何度もしました。
ご家族は、本人の意思決定を尊重していました。

なにせ86歳と高齢です。
男性の平均寿命を6歳も超えています。
日本尊厳死協会の会員さんですから、私も共感を持って接していました。

彼と私には強い信頼関係が築かれたと思います。
以上の経過の中での会話を、動画としてたくさん記録しています。
ご家族も私の講演を何度も聴きに来られているので、こうして書けます。

がん拠点病院の専門医が2人とも「手術で完治する可能性が十分ある」
と判断した86歳の進行胃がんを、もし手術しなければどうなるのか??

その結果は、明日、報告いたします。

PS)
昨夜は、栃木県足利市で平穏死の講演をしたあとは、
都内で座談会でした。

今日は、栃木県館林市でまた講演です。
講演後は、帰阪します。

引き続き台風に気をつけてください。