《1656》 ブリタニーさん、自殺しないで! [未分類]

今日11月1日は、アメリカのブリタニーさんが安楽死
をすると宣言した日です。
“安楽死”とは、医師が介助する“自殺”のことです。

この数日間、彼女の気持ちを、自分に置き換えて考えていました。
もし私が若かったら、ブリタニーさんのように望むかもしれません。
しかし人生の後半戦になったら、もうそんなことは考えません。

まして仕事柄、毎日毎日、生きたくても逝ってしまう人たちと一緒にいます。
生きられるだけ生きませんか? という気持ちになります。
そのために緩和ケアがあるはずです。

未来があると思うから自殺を考えるのかもしれません。
「将来を悲観して自殺した」という文章が成立するのです。
将来があまりなければ、もう少し生きたいと思うのが人間ではないか。

人間は、あまのじゃく、です。
死ね! と言われたら生きたくなり、
千年生きろ! と言われたら早く死にたくなります。

ブリタニーさんは、まだ29歳なのでそんな気持ちになったのでは。
いくら安楽死が合法化されている国とはいえ、彼女の自殺を食い止め
ようとする医師や看護師はいないのでしょうか?

折しも、最近、あるがん拠点病院でまだ若い脳腫瘍の患者さんの
退院前カンファレンスがあり、在宅主治医候補として参加しました。
MRI画像を見せられた時、「ブリタニーさんと同じ!」と思いました。

その方は脳腫瘍を切除し、取り残しに対して放射線治療を受けました。
もし何もせず放置していたら半年で亡くなっていたそうです。
「余命半年」という宣告はブリタニーさんと同じです。

しかしその方はそれから2年経った今でも、そこそこ元気です。
まだ抗がん剤治療を行っていますが、本人は「一刻も早く家に
帰りたい」の一点張りでした。

何としても家に帰るぞ! 家でゆったり楽しむぞ!
というオーラがビンビン、出ていました。
私たち、在宅ホスピススタッフはそうしたニーズに精一杯応えます。

だから、ブリタニーさん、自分で死なないでください!
人間はいつか、必ず死にます。
老いも若きも、早晩、死にます。

私は「死ぬ権利」なんてない、と思ってます。
死は神様が決めるもので、自分で決めるものではありません。
自分で決めるべきは、人生の最終章の延命治療の具体的内容。

過剰な延命医療を受けずに平穏死/自然死/尊厳死できれば
いいのですが、そんな人の割合は日本では少ない。
一方、5%の人は突然死します。

安楽死と平穏死は、まったく違うものです。
厳密には連続性がありそうですがが、違うものと理解してください。
とにかく、死に急ぐ必要はないと私は考えます。

我々は、生かされているのす。
病気や障害を抱えながらも、懸命に生かされているのです。
だから、ブリタニーさん、生きられるだけ生きてください!

遠く離れた尼崎から届くはずがないメッセージを送ります。
報道を毎日見ていると、決して人ごとだと思えないのです。
どうか「緩和ケアを受けて生きる」という道があることも知って下さい。