昨日15日は京都で開催中の第55回日本肺癌学会で講演しました。
私の演題は、「肺癌の在宅療養」で、施設ホスピスとのディベート。
がん研有明病院の向山雄人先生は、施設ホスピスの話をされました。
私は3人の肺癌患者さんの写真や動画を使いながら話しました。
在宅で最期まで生きられた患者さんの話です。
過去3年間で、30人位の肺癌の在宅患者さんとご縁がありました。
患者さんには本当にいろんなことを教えて頂きました。
外来で診ていて自然に在宅医療に移行する患者さんの在宅期間は長い。
一方、がん専門病院からギロギリで在宅に紹介される患者さんは短い。
前者の多くは、酸素も気管の吸引も不要。
一方、後者はたいてい酸素10リットルでゼコゼコで帰ってきます。
両者の違いは一体何だろうと?
また肺癌の看取りについても話しました。
肺癌はもっとも在宅療養に向いていると。
特におひとりさまには一番向いていると。
申すまでもなく、肺癌は日本人のがん死のトップです。
一番メジャーな病気である肺癌の在宅療養は難しいと思われているのではないかと想像し、
そうではない、という話をしたつもりです。
しかし、質問は一人だけでした。
講演終了後に話しかけてきた医師も、たった一人だけでした。
最初から分っていることですが、肺癌専門医はこんな話に興味が薄い。
私は病院と在宅の橋渡しをしたいと願っています。
それは両者があまりにも文化の差がありすぎるからです。
療養病床と在宅の橋渡しをするようになり何年か経過しました。
昨日はがんセンターと在宅との連携の話をしたつもりでしたが、
若い先生方は、そんなことには全く関心が無いように感じました。
4000人以上の参加者がありますが反応があったのはたった一人。
ある意味、日々、実験をしているのです。
私の話にどれくらいの人が共鳴してくれるのか。
残念ながら、昨夜の成果は1人でした。
しかし先日の「患者不在のキャンサーボード」でも書いたように
病院の先生の中にも、患者中心の医療に目覚めている医師はいます。
正直、こんなオッサンでもまだまだ頑張らないと、と思いました。
肺癌治療はめまぐるしく進歩しています。
新しい手術法もビデオで見せて頂きましたが、努力に頭が下がりました。
ただ、助からない肺癌をどうするかについてはまだまだ議論が必要です。
4000人を超える参加者のうち700人は、
コメデイカルや患者さん自身だったそうです。
肺癌学会では異例の盛り上がりだったそうですが、そんな時代なのです。
最終電車で京都から福井に着きました。
朝一番で第7回日本在宅ホスピス協会全国大会で講演するためです。
全国の実力のある在宅医らと、さっきまで歓談していました。
病院と在宅の文化の差。
それを埋めるために、今、ここに自分がいるのだ。
勝手にそう思いながら、これから短い眠りにつきます