《1675》 骨折を「骨折」と説明するべきか…… [未分類]

毎日、転んで尻もちをつく人がいます。
転びかたにもよりますが、そこから動けなくなり
家族に連れてこられたり、往診したりします。

まず考えられることは2つ。

  • 腰椎圧迫骨折
  • 大腿骨頚部骨折

です。

たいていレントゲンを撮るとその場で判明しますが、
少し時間が経ってからでないと分からないこともあります。
要は、骨折が有るか無いかです。

圧迫骨折とは、脊椎の骨がグシャッと形が崩れることです。
レントゲンで診ると、長方形の骨が、やや崩れることです。
しかし骨折は骨折。

本人や家族にそれを説明すると大騒ぎになることがあります。

  • すぐに手術しなくてもいいのか?
  • 命に関わらないのか?
  • 入院しなくてもいいのか?

などなど。

もちろん手術の対象では無く、待てば「日にち薬」で治ります。
痛み止めの薬を飲んだり、座薬を入れたりして数日を乗り越えます。
その間、寝がえりも難しいことがあるので介護が必要です。

入院された場合、2~3週間程度で退院になることが多い。
在宅で様子を見る場合も同じですが、家族の不安は募ります。
「入院したほうが治りが早いんじゃないか?」という質問が多いです。

基本的に元に戻るわけではありませんから、入院しても同じです。
痛みが強い間の介護をどうするかという問題であって、入院しても
骨折そのものの経過は、基本的には同じことです。

しかし多くの家族はその場で救急車を呼んで、病院に搬送します。
歩けなければ、当然、入院になります。
病院でも家でも、1カ月もすれば元どおりに歩けるようになります。

入院して長期間、寝込んでいるうちに、寝たきりになったり認知症が
進行することが最も心配ですが、家族は後で気がつくことが多いです。
二度と家に帰ってこられなくなった人も沢山いました。

もちろん、病院によって療養方針が多少異なります。
多少痛くても、早期から積極的にリハビリを行う病院と、
ただただ寝かせたままの病院に分かれます。

一方、在宅療養を選択しても「入院したほうがいいじゃないか」と
常に不安を感じる患者さんやご家族が必ずおられます。
「とにかく骨折なら入院でしょ」と言われることがよくあります。

ですから、心配させないためにあえて「骨折」という言葉を使わずに、
「骨がひしゃげた」という表現をすることもあります。
しかし、後で別の病院で「骨折」と説明され、文句を言われたことも。

一般に「骨折」というと、骨がポキッと折れるイメージでしょうが、
圧迫骨折はかなり違うイメージです。
イメージ写真を使うなど、骨折の説明には工夫をしています。

PS)

日本慢性期医療学会のため熊本に来ています。
日本医師会長も来賓として来られています。
昨夜は、本日講演される養老孟司先生にご挨拶しました。

良質な慢性期医療とは何かについて、2日間の研究発表がなされます。
私もシンポジウムの司会などの仕事があたっています。
今夜は、熊本市内の陣内病院でも講演しています。