《1740》 都会の中の「医療砂漠」 [未分類]

クールファイブの「東京砂漠」という歌が好きです。
どこか切なく、心に染みいる歌詞と曲。
都会の医療も、かなり砂漠状態です。

昨日、25の病院に断られた事例を紹介しました。
命に危険があるのに、そんなバカな。
まだタライ回しをやっているのか、ケシカラン!

様々な意見が聞こえてきそうです。

以前も書きましたが、これはタライ回しではありません。
受け入れ不能です。
病棟が満床であったり、外来が満員で診ることができないのです。

どうしてこうなるのか?

  • 高齢者が増えて、病人が増えた
  • 寒いので、病人が増えた
  • 感染症が流行っている

これは事実です。
高齢化は年々、加速しています。
しかし医者側にも原因があります。

医療の専門分化が進んでいるからです。

当直医が、その領域の専門医である可能性が少ないから。
当直医はたいてい1人です。
たとえば、重大な骨折の患者さんが発生したとしましょう。

整形外科医が当直している場合は、まず稀です。
運良く、外科医が当直していても断られます。
専門外に手を出して結果が悪ければ、訴えられるかもしれないから。

腸閉塞の患者さんの場合はこうでした。
当直医は、泌尿器科の先生だったので断られました。
しかし外科系と内科系のオンコール(電話待機)の医師もいると。

外科系のオンコール医師はこう言いました。
「腸閉塞は、内科です」

内科系のオンコール医師はこう言いました。
「腸閉塞は、外科です」

再度、内科医にお願いしましたが、今度は
「私は肝臓が専門なので腸は診られない」……

こんな感じで、医師の専門と患者の病気がマッチしないのです。
重大な病気であればそうかもしれませんが、肺炎のような
ありふれた病気の場合でも同じような理由で断られることがある。

「私は、呼吸器科専門医では無いので診れません!」

私は、これこそが「タライ回し」だと思うのですが。

こうならないように、10年前から新臨床研修医制度が導入
されましたが、その目的が達成されているとは到底思えません。
夜中まで働いていた研修医が、9時/5時になっただけのような。

思わず「じゃあ、俺が病院に行って診てやる」
そう言いたくなる局面が、多々あります。
私の勤務医時代(大昔)は、内科も外科も関係無く診ていましたし。

しかし今、病院に行ってそんなことをしたら、捕まります。
そんなこんなで、搬送先を見つけるのに半日かかることも。
最悪の場合、丸1日かかったことも。

患者さんやマスコミは「タライ回し」と呼びます。
しかし、なぜそうなるのかを考えようとしません。
「妊婦の受け入れ不能報道」も同じことです。

都会にはたくさんの病院があります。
しかし夜間は、無医村のような状態になります。
東京砂漠ならぬ、医療砂漠です。

しかし病院を増やすことは、今後、一切ありません。
10年後には、要らなくなることがわかっているからです。
むしろ、急性期病院は大幅削減の方向です。

その急性期病院の動向については明日、書きます。