よく不定愁訴の人が来られます。
付き添いの家族はこう言います。
「こいつは自分で病気を造るんですよ」
たしかに、なんでもパソコンか自己判断で勝手に診断名をつけて
病気にしてしまう人が、ある一定頻度で必ずおられます。
医師になって30年ですが、そうした人は年々増えています。
医療機関にとってはいいお客さんでしょう。
検査や薬で売り上げが増えるかもしれない。
でもその人にとって、それが本当にいいことなのでしょうか?
私はずっと疑問です。
本人や家族の「圧力」や、私自身の中の「不安(病気の見落とし)」
に負けて検査をしたり薬を出してしまうことが大半ですが、不本意です。
そもそも、患者が病気を造るのは、「不安」があるからです。
なぜ、「不安」になるのか?
それは一言で言うと、食事のバランスが悪いのと歩かないからです。
「不安」を治すのに、本来は薬は要りません。
使うとしても短期間、一時的に少量だけ使うのが基本です。
それを見抜き、説明するのが元来、医師という職業のはず。
しかし現実には、なかなかそうはいかない。
患者さんが病気を造る理由を「不安」と書きました。
では、医者が病気を造ることを何というか知っていますか?
「医療化」と言います。
なんでも病名をつけてそれに適応があると定めた薬を投与するのです。
新しい病気ができれば、新しい薬の「新しい市場」が生まれるのです。
最近出てきた病気の中には、相当数の「医療化」が含まれています。
テレビで病気のコマーシャルをやるようになったのはいつからなのか。
当然、製薬会社がお薬を売って儲けるためです。
そのためには、まず「医療化」する作業から始めることになります。
そうしたテレビを用いた医療化に権威ある医師が登場する時代なのです。
私は、もう世も末だな、と感じます。
しかしそれを真に受けて医療機関を受診する人が増えるのが現実です。
「医療否定という極論」を書きたいわけではありません。
「必要な医療化」と「医療化による必要でない、過剰な医療」を
嗅ぎわける力をつけて欲しいと願うだけです。
患者のために医療があるのであって
医療のために患者があるわけではない。
もちろん、製薬会社のために患者があるわけではない。
しかし多くの医師も「医療化」されています。
しかしそうでない医師も大勢いますので安心してください。
両者を嗅ぎわけるのは患者さんの勘、そして「実力」です。
今日は、とりあえず「医療化」という言葉を知ってください。
そして「医療化」されないようにくれぐれも気をつけてください。
そのためには、患者さん自身がよく勉強して賢くなることです。
加えるならば、たとえばこのアピタルのような医療系サイト自身が
医療化の手助けをするということがないように気をつけてください。
それには、"エビデンス"という言葉に騙されないようにすることです。