おそらく1000回くらい、平穏死の講演をしてきました。
たいてい冒頭は「多死社会」についての話をします。
だから在宅医療や地域包括ケアが必要になった、と。
現在、日本全体で年間120万人の人が亡くなっていますが、
この数字は、年々増えているのか? それとも減っているのか?
こうした極めて単純な2者択一のテストをすることがあります。
内心、こんな質問をして失礼かな? とビクビクしながら聞きます。
果たして、沢山の人が「減っている」に手を挙げます。
もちろん正解は「増えている」のですが。
「多死社会」なのだから。
そんなの当たり前!、だとみなさん思われるかもしれません。
しかし、講演会場では、決してそうではありません。
お医者さんの集まりでは、正答率は5割を切ります。
がん専門病院で講演した時は、9割が間違いました。(正答率1割)
偉いお医者さんになればなるほど正答率が下がるという傾向がある。
先日も3時間の講演を終えた直後の懇親会の席でこの質問をしてみた。
そこに居るのは医師や看護師や保健師やケアマネの指導的立場の方々。
するとなんとそこに居る全員が「減っている!」に手を挙げたのです!
理由を聞くと、見事にみなさん同じ答えが返ってきます。
「医学が発達しているから人は簡単に死ななくなった」
たった今、それを3時間話したばかりなのに・・・
それも優秀なリーダーや座長さんまでが、簡単な質問に間違える・・・
結局、また「人は死ぬ」という話だけで1時間が終わります。
結局、一生懸命話したり、本を書いてもほとんど伝わらないことが
身にしみて分かったのが、皮肉にもこの3年間の収穫でした。
人に伝えることは本当に難しい、と少し落ち込んでいるところです。