先日、「親の胃ろう」についての相談を受けました。
セカンドオピニオンは受け付けていないのですが、かなり
遠方から来られたので少しだけ話を聞くことにしました。
85歳になる認知症の母親が、誤嚥性肺炎で入院している病院の
主治医から強く胃ろうを勧められているが、どうすればいいのか
というような相談でした。
まあ、よくある相談です。
「胃ろうという選択、しない選択」という本を差しあげて、胃ろうの
メリットとデメリットを、20分ぐらいかけて丁寧に説明しました。
これまで何度もやってきたことです。
すると子供たちはあれこれ悩んだあげく、結局、
「胃ろうはしない」、
という選択をなされました。
ところでお母さんは会話はできるのかと、何気なく聞いてみました。
すると十分できるとのことでひと安心。
ならば、入院前のように口から食べられる可能性が十分にあります。
在宅療養も考えられているそうなので、口腔ケアや嚥下リハビリの
重要性についても、いろいろな説明を加えました。
食支援も採り入れて全力をあげて介護するが、食べられなくなったら自然に任せると。
だんだん、平穏死、自然死、尊厳死の話にもなっていきました。
子供さんたちは私の説明に納得されて、一連の相談が終わろうとした時、
一人がこんなことを言われました。
「ところで先生、鼻からのチューブはどうすればいいですか?」
「鼻からのチューブ??」
「そうなんです。入院した日から鼻から管を入れて栄養をしています」
「え? 入院した日から……??」
入院したその日から鼻から管が入り、人工栄養が始まっていたのです!
その管についてはご家族に何の説明も無く、いきなり入れられたと。
そして今回、鼻からの管を胃ろうに変更することを勧められてるとのこと。
「それを早く言ってくださいよ!」
思わず口にしてしまいました。
鼻から管の栄養も胃ろう栄養も本質的には、人工栄養法であり
経路が少し違うだけです。
もちろん胃ろう栄養の方が圧倒的にメリットが大きいのですが。
話は振り出しに戻りました。
さっきの「胃ろうはしない」という結論は、あっという間に
「胃ろうにして下さい」に変わりました。というか、変えました。
仕方がありません。
既に人工栄養をしているという大前提を知る前か、知った後かで、
まったく話が違うということです。
すでに鼻から栄養をやっているのであれば、早く胃ろうにする
のはもはや常識で、そのほうが本人は楽に決まっています。
そんな相談であれば、迷う余地はありません。
繰り返しになりますが胃ろうは、最も優れた人工栄養法です。
その人工栄養をやるかやらないのかが、一番の問題のはず。
しかし人工栄養は、入院当日から始まっていた。
そもそも、鼻から管の栄養を開始する時に、説明が無かったことが問題。
いまさら私がそんなことを言っても、仕方がないのですが。
胃ろうの相談は、時間がかかります。
よく聞かないと、かえって時間がかかることになります。
セカンドオピニオンも『急がば回れ』だと思いました。