《0177》 「医学博士」と「専門医」 [未分類]

私が大学病院の医局にいた時は、「医学博士」の時代でした。
その資格を得るために、無給医局員でも頑張る、という感じでした。
私は医学博士を授与された翌月、関連病院に出向を命じられました。

当時、まだ「専門医」という資格は、一般的ではありませんでした。
先輩からも、「専門医より医学博士だよ」と、言われて育った世代です。
しかし現在、両者の意味合いは、大きく変化してるようです。

教授職をめざす医者は、大学院に入り、「医学博士」を取得します。
しかし、現在、大半の医師は、圧倒的に「専門医」志向です。

専門医は、一定期間、研修指定病院に勤務しないと取得できません。
専門医の種類によって、取得までの難易度に差があったようです。
そこで、「専門医」という名前にふさわしい認定基準の見直しが
各学会で、行われているようです。

私も四つの学会の「専門医」を取得しました。
「医学博士」が一生の称号であるのに対し、「専門医」は更新が必要です。

私自身の経験で言えば、「医学博士」も「専門医」も、どちらも、
これで得をした(給与が上がったとか)ことは、一度もありません。
専門医資格から直接得られる報酬のようなものはありません。

私の世代(50、60代)の医師には、一つの迷いがあると思います。
専門医資格をいつまで維持するのか、です。
維持するためには、一定の頻度で学会への参加が条件となります。

専門医のメリットがない、学会に参加する時間がないなどの理由で、
ある年齢になると、「専門医更新」への意欲が低くなるように感じます。

患者さんには、「専門医」資格は分かりやすい指標でしょう。
現在では、駅の看板に表示することも認められています。
「専門医」資格は、どこまでも信用の目安であるべきです。

そうした国民の期待に沿えるような専門医のあり方が、議論されています。
現在、専門医の資格がなくても、自由に診療科を標榜できます。
しかし、いつか診療科の標榜に、専門医資格が問われるかもしれません。

いくつかの課題があります。
真に「専門医」と呼ぶに値する制度になっているのか?
維持・更新するための条件を、どのくらいに設定するのか?
まだまだ、発展途上の、「専門医」制度だとご理解ください。