日々、全国からいろんな医療相談が舞い込みます。メールや手紙、時には直接来院される方もおられます。セカンドオピニオンは受けていないのですが少しだけ聞きます。
先日あった相談は、95歳女性の高カロリー輸液の相談でした。生来元気で医者いらずだったのですが、発熱で病院に行ったら、誤嚥性肺炎との診断されて入院させられました。
生まれてはじめての入院生活。たしかに90歳代の肺炎の9割は誤嚥性肺炎と言われています。入院当日から、絶食を指示されました。
結局、2週間、安静と絶食を指示され、1日1000mlの点滴を受けましたがみるみる衰弱して、会話もままならない状況になった。おまけにせん妄が出てきて、認知症が進行した、と説明されました。
そこで次の病院に転院して提案されたのが、高カロリー輸液でした。本来は胃ろうだが、胃がんで胃を全摘しているので、高カロリー輸液をしないと死んでしまうとの説明を受けてIVHポート埋め込み手術の話。
本人は昔から「俺は延命は要らない」と言っていたそうです。家族も、歳も歳だし、自然に任せたいという考えでした。しかし病院側は強引に高カロリー輸液を勧めていました。
まずは、高齢者を1週間寝かせると、寝たきりになります。第二に、高齢者を2週間絶食すると、食べられなくなります。第三に、病室に閉じこめると、1日でせん妄が出るのは当たりまえ。
「どうしたらいいでしょうか?」
「どうしたいですか?」
「食べさせたいです」
「じゃあ、主治医にそう頼んでみては」
「言いましたが、一生食べられないの一点張りで 高カロリー輸液のことしか頭に無いようです」
「じゃあ、もし食べて死んでも納得されますか?」
「覚悟しています」
「主治医は退院したら死ぬと言っていますが、どうすればいい?」
「家族の責任で退院されたらどうでしょうか」
果たして翌日、本当に家に帰ってきました。しかし想像以上にかなり衰弱しており、小さな声しか出ない状態でした。食べたいですか?と聞くと、食べたいです!との返事が返ってきました。
最初は、水のゼリーを持つこともできませんでした。しかし少しずつならムセながらも飲むことができるようになりました。そして1週間後には、なんとご飯を食べられるようになりました。
そして立ち上がることができるようにもなりました。多少のステロイド入りの点滴を使いましたが、なんとか回復軌道へ。最初に会った時は、死ぬか元気になるかは半々かな?との説明でした。
家に帰るのがあと1日遅かったらおそらく回復していなかったでしょう。その意味では、まさに危機一髪の退院劇だったと言えるはずです。
家族はいったい何のために入院したのか分らない、と言われました。肺炎での入院はもうこりごり、とも。
今では、高カロリー輸液の話はみんなもう忘れています。実は同じような相談や経過を辿るかたが本当に多いです。