《1791》 リビングウイルを知っていますか? [未分類]

長尾和宏の死の授業 in 東京大学・5》

リビングウィルを知っていますか?

長尾  他に、「死」について今まで家族や友達と話し合ったことがあるという人は?

学生IV 家族とは話したことがあります。「仕事がなくなったら、死にたいよね」というようなことを、親が話したのがきっかけです。

長尾  自分の役割がなくなったら、生きていたくないということですか?

学生  はい、うちの親は「仕事がなくなったら、もういい。死にたいと思ったときに、死ねるようにしたい」と言っています。だから、私も親の歳くらいになったら、そう思うだろうなと。

長尾  親子でそういう話し合いができるのは、素晴らしいことです。他に誰かいますか?

学生V 《リビングウィル》が変わってきているという話を友達としました。

長尾  皆さん、今出てきた言葉、《リビングウィル(Living Will)》ってどういうことかわかりますか? 死んでからのことを託すのが遺言状です。主に財産のことなどを記したものですよね。財産分与などについての、故人の意思を残したものです。それに対して、死ぬ前の医療に関する希望を記したもののことを《リビングウィル》って言います。日本尊厳死協会のHPにはこう書かれています。

回復の見込みがなく、すぐにでも命の灯が消え去ろうとしているときでも、現代の医療は、あなたを生かし続けることが可能です。人工呼吸器をつけて体内に酸素を送り込み、胃に穴をあける胃ろうを装着して栄養を摂取させます。ひとたびこれらの延命措置を始めたら、はずすことは容易ではありません。生命維持装置をはずせば死に至ることが明らかですから、医師がはずしたがらないのです。

「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。

学生V 私達にはまだ早いです……。でも、興味はあります。

長尾  今、あなたは何歳ですか? 22歳? それならば、《リビングウィル》を書いても大丈夫ですよ。《リビングウィル》は、15歳から表明できることになっています。実際、15歳で表明している人が、日本尊厳死協会にはいます。遺言状も15歳から書いていいそうです。ただ、その若さで興味を持ったということだけでもう、素晴らしいね。なぜ興味を持ったのですか?

学生V 尊厳死・安楽死とかが最近話題になっているので……。

(続く)

(参考文献) 「長尾和宏の死の授業」(ブックマン社)