年に一度の健康診断さえ受けていれば、ほぼ大丈夫?
Q. 年に一度の健康診断を受けてさえいれば、たとえがんが見つかっても、大事には至りませんか?
また、簡易的な(大雑把な?)会社の人間ドックだけで大丈夫なものでしょうか? ときには、もっと丁寧に診てくれる高価な人間ドックを自費で受けるべきでしょうか?
健康診断でいちばん見つけやすいがん、見逃すがんなども具体的にお願いします。
さらに、たとえば大腸カメラや胃カメラは本当に1年に1回も必要なのか? マンモグラフィは30代は無用なのか? 放射線のリスクは? 等、この健康診断は実は過剰だと思うものもあればぜひ。
企業に勤めている方は、年1回の健康診断を受けることになっています。
企業(雇用主)は健診の実施が義務で、社員にとっては受けることが義務です。
健康診断の実施は法律で定められており、違反すると罰則があります。
雇用主は労働者の健康を守る義務があります。
知っておいてほしいのは、会社の健診項目は主に生活習慣病の発見がターゲットで、
がん検診は入っていない、ということです。
従って、がんに関しては「年に一度の健康診断さえ受けていれば大丈夫」ではありません!
つまり自分の意思で、がん検診を受けるしか方法がありません。
お金がある人には、高価な人間ドックは悪くありません。
イヤなことが短時間で済むという大きなメリットがあります。
お金がない人は、市町村が行うがん検診を利用するのがお得です。
また当院のような町医者でも、がん検診は毎日やっています。
続いて、がん検診でも見落とす可能性のあるがんについて。
- スキルス胃がん → 進行が早いので、1年1回では早期発見できないこともあります。
アナウンサーの逸見政孝さんは、半年ごとに受けていたのに早期発見できなかったそう。
スキルス胃がんの早期発見には、胃透視が胃カメラより優れている
とも言われています。
- 大腸がん → がんが大腸の奥の方にある場合には、便潜血が陰性となることもあります。
大腸カメラは、ポリープ等がある人は半年ないし1年ごとに行いますが、
病変が無かった人は、その後は2年ごとで十分だと思います。
- 肺がん → 胸部単純レントゲンだけでは、見落とす場合があります。
できればCTで、と言いたいところだが、CT被ばくの問題があります。
喫煙が最大のリスクですから、喫煙者は、肺がんや食道がんになるもの、
と考えて、毎年必ず、胸部X線、胃カメラ、腹部エコーを受けて下さい。
- 乳がん → 触診だけでは見落とすので、必ずマンモグラフィーを併用してください。
30~50歳代の女性が要注意です。
- 膵臓がん、胆管がん → 脂っこいものが好きな人(グルメ)や、印刷工場の人は要注意。
臨床検査技師さんが腹部エコーを行う場合、多くの場合、
胆のうを中心に見ているので、早期の膵臓がんや胆管がん等を
見逃す可能性があります。
また絶食で行かないと、膵臓はよく見えないので見落としがある。
マンモグラフィは30代は無用なのか? 放射線のリスクは? という質問に対して。
乳がんは若い女性の病気です。
30代だからこそマンモモグラフィー、だと思っています。
検診のメリットと放射線のリスクを天秤にかけても、迷う余地は全くないと思います。
次に、この健康診断は実は過剰だと思うものもあれば是非、とのことなので遠慮なく書いてみます。
個人的には、PET検診はどうなのか? と思っています。
私も一度受けたことがありますが、がんでない所があちこち光っていました。
がんが光るのではなく、炎症がある場所が光る、と理解しておくべきでしょう。
PETは、がんが確定した人の進行度や治療効果の評価のために行うものであり、
元気な人が毎年受けるような検査ではないと私は思っています。
理由としては
- がん以外でも光るし、がんでも光らない場合がいくらでもある
- CT検査なので、毎年受けると放射線被ばくの問題がある。
PET検査で胸が光ったので、肺がんを必死で探しても見つからなかった。
しかし1カ月後に胃カメラをしたら、進行した食道がんだったとうことも。
そんなことなら最初から普通に胃カメラをしていたら……ということも。
しかし、異常な怖がり屋さんや、検診嫌いな人にはいいかもしれません。
たまたまPET検診を受けて命が助かったという人も、いくらでもいます。
要は人によっては無駄・過剰になる可能性がある検査だと思っています。
(続く)