《1816》 セカンドオピニオンはあまりやりたくない [未分類]

がん医療、ここが分からないシリーズ・9

セカンドオピニオンのタイミングって?

Q. 長尾先生は、ブログなどでときどき「私はセカンドオピニオンはやっていないが、セカンドオピニオンで来られる患者さんがいて、(仕方なしに)保険診療内で相談にのっている」と書かれていたかと存じます。

セカンドオピニオンとは、主治医の断りなしに自由に行っていいものなのでしょうか? それとも、紹介状やレントゲンなどがなければ、がんのセカンドオピニオンは受け付けてもらえないのでしょうか?

友人ががんになったとき、マスコミで有名なお医者さんのところにセカンドオピニオンに行きたいと大学病院の主治医に伝えたら、ものすごく嫌な顔をされたそうです。主治医というのは、やはりセカンドオピニンはイヤなものですか?

また、手術に戸惑っていた別の友人は、「セカンドオピニオンを受ける間にがんがどんどん進行していきますよ。それでもいいのですか?」と脅しのように言われたそうです。

がん患者さんの皆さんは、どのようなタイミングでセカンドオピニオンをやっているのでしょうか? 主治医に嫌わるのではないかとコソコソしながらやるのでは、ストレスが溜まりそうです。

セカンドオピニオンとは主治医に申し出て、画像や診療情報を持たせてもらっての受診のこと。
医療相談だけなので、通常、自費扱いになります。

1時間あたり1万円程度が相場でしょうが、患者さんにとっては高価であっても、病院側にとっては
医師コストの原価にも満たず、勤務医にとっては還元も無いので、ボランテイアの雑用かと思います。

それにもかかわらず、責任は重大です。
短い時間に限られた情報だけで患者さんの命を左右する重大な発言を強いられます。

やるほうも、本当はあまり気が進まない仕事ではないかと想像します。
私自身も正直、セカンドオピニオンは好きではないのですが、来られたら仕方なくしているだけです。

私は保険診療で相談を受けていますが、3割負担の人で約800円、1割負担の人で約300円程度。
一方、専らセカンドオピニオン外来だけの有名先生は40分で4万円も取るそうで、その差は何十倍です。

セカンドオピニオンを申し出たら怒ったり脅したり主治医がいるとのことですが、分かる気がします。
寿司屋で寿司を食べている最中に「他の寿司屋の味見もしたい」と言えば、そりゃ親父は怒るでしょう。

親父は「出ていってくれ!」で済みますが、医師は医師法での応召義務により患者さんの希望に対応
しているだけで、セカンドオピニオンで金儲けをしている医師以外は、あまりやりたい仕事ではない。

相談先が大学病院の同一傘下の病院であれば、相談してもおそらく同じような答しか返って来ません。
標準治療ないし、それぞれの流派に従って治療を行っているからです。

もし相談をされるのなら同一傘下ではなく、毛色が異なる病院に相談に行くべきでしょう。
がんの治療方針が病院によって異なることはいくらでもあります。

肝臓がんを腹腔鏡手術で切除する病院もあれば、開腹手術しかやらない施設もあります。
前立腺がんでは、ある病院では手術、別の病院では放射線治療、なんてことはざらにあります。

納得のいく医師、そして治療法に巡りあうために、セカンドオピニオン制度があるのだと思います。
ならば上記のネガテイブな意見も知った上で上手にこうした制度を利用することは悪くありません。

腕のいい医師の中にはセカンドオピニオンが好きな医師もいることも知っておいて下さい。
相談後、患者さんが他の医師から替わり、症例数が増えることを素直に喜ぶ場合もあります。

どんなタイミングで受けるべきか? とのご質問ですが、それは様々でしょう。
どこか離婚相談と似ています。

私は、最初のタイミングとしては、最終診断時や初回治療前が大切と思います。
診立ては何より大切だし、がん治療では初回治療が最も重要だと思うからです。

治療に行き詰まった時や2つの選択肢に迫られた時などにも、相談されたらいい。
ちなみに町医者の私には、「抗がん剤のやめどき」に関する相談がいちばん多いです。

セカンドオピニオンを受ける際には、質問の核心を絞ってからのほうがいいでしょう。
時間が限られているので、いちばん聞きたいことだけにしないと、無益な作業になります。