抗がん剤を選んでください、と言われたが……
Q. 夫が胃がんで入院しました。もう手術は受けられないとのことで、抗がん剤治療以外選択肢はありません。
抗がん剤専門医より、副作用が激しいが延命効果の強い<A>という抗がん剤か、副作用はたいしたことはないが、<A>に比べると延命効果も少ない<B>という抗がん剤、どちらかを選んでくださいと言われており、来週までに結論を出さなければなりません。
抗がん剤を自分で選べるということが、患者主体の医療ということなのでしょうか?
本やインターネットで調べてはみましたが、本人はもちろん、家族だって選びようがありません。しかし夫は、「お前が決めてくれ」と言います。いっそのこと、1種類だけ提示してほしかったです。
どうすればいいのでしょう?
A. お気の毒に、ヘンなお医者さんに当たってしまったのですね。
私のところにも同様の相談がよく舞い込みます。
その方は主治医に「手術にしますか? それとも放射線にしますか?
家族とよく話し合って答を教えて下さい」と言われたそうです。
素人にそんな判断を迫るのがインフォームドコンセント(IC)であると
信じているお医者さんがまだいるのですね。正直、呆れかえります。
副作用が激しいが延命効果の強い<A>なのか、延命効果も少ない<B>という抗がん剤か
を決める前に、まずは抗がん剤をやるのか、やらないのかを話し合わねばいけません。
胃がんの悪性度、患者さんの年齢や全身状態、希望や人生観によって大きく変わります。
<A>か<B>かだけでなく、抗がん剤をしない(=<C>)という選択肢もあるでしょう。
患者さんにはこんな意味不明なICを押し付ける一方、以前にもここで書きましたが、
「患者不在のキャンサーボード」を押しつけられる場合もあるので注意が必要です。
本来はそれを決めるのがキャンサーボードなのですが、そこに肝心の患者さんが不在。
私は患者さんをキャンサーボードに入れることから、真のICが始まると思っています。
医者はプロなのでプロらしく、沢山の選択肢の中から最良の選択肢を提案すべきでしょう。
1種類だけとのことですが、時にはパターナリズム的となることは仕方が無いと考えます。
一方、医者の側から言い訳をするなら、訴訟が怖いので質問のようなICになるのです。
「絶対に先生を訴えないから本音を聞かせて」と言って、本音を引き出してみればどうか。
いろんなことを連想させるいい質問だと思います。
いずれにせよ、現在多くの病院で行われている質問にあるようなICは改めるべきだと思います。
患者主体といいながら、患者主体になっているとは思えないところがある。
この議論には、市民や患者さんにも入っていただかないと、変わらないと思います。