《1820》 今までの抗がん剤と分子標的薬、どう違う? [未分類]

 がん医療、ここが分からないシリーズ・13

今までの抗がん剤と分子標的薬、どう違う?

 看護師です。これからは分子標的薬の時代、と言われながら早数年が経っていると思います。
当初は、既存の抗がん剤とちがって正常細胞へのダメージが少なく、副作用も格段に軽減すると言われていたようですが、実際に使用している人を見ていると、そうとも言えないような気が……
長尾先生は患者さんをご覧になって、既存の抗がん剤と分子標的薬、その効果、そして副作用の表れ方は大きく違うと感じていらっしゃいますか? 
逆に、デメリットはないのでしょうか?

A 分子標的薬といえば、新聞にはなんだが悪の代名詞のように書かれた"イレッサ"が真っ先に浮かびます。

  当時は、肺がん患者さんに続々とこの薬を使い、間質性肺炎の副作用が問題になった。
  しかし現在ではEGFR遺伝子陽性の人にのみイレッサは使われるようになっているはず。
  
  イレッサが効き易いと分かった肺がんの人にだけ投与されるのです。
  しかし人によって効果はかなり違います。

  肺がんが全身の骨に転移してがん専門病院から「余命2ケ月」と宣告された人がイレッサを飲んだら、まるでウソのように骨転移が改善して8年生きたことがあった。

  余命宣告がいかにいい加減なものかを、その患者さんが身をもって教えてくれました。
  しかしこの方は、間違いなくイレッサの著効例で、そこまで効く人は少ないようです。

  今までの、抗がん剤といえは、じゅうたん爆撃で分子標的薬は、がん細胞だけのピンポイント攻撃だとよく言われます。

  まあだいたい当たっている比喩なのでしょうが、外れている場合もあります。
  やはり、副作用なり正常細胞までもダメージを受けるような場合もあります。

  分子標的薬でも効く薬とあまり効かない薬があります。
  臓器によっても、組織型によっても、個人によっても効果や副作用は違ってきます。

  副作用は総じて従来の抗がん剤より軽い印象ですが到底無視できるレベルではありません。
  だるさや食欲低下がみられる人もいるので、副作用に関しては楽観は禁物と言うべきです。

  分子標的薬の最大のデメリットといえば、薬価がとっても高いことだと思います。
  ただ3割負担の人なら、自己負担金約8万円強を超えた金額はあとで返金されます。

  これからは、ますます分子標的薬の時代に移行すると言われています。
  遺伝子検査で薬が効く可能性が高いのであれば、やっていいでしょう。

  最も辛いことは、一旦よく効いても通常1~2年後には効かなくなること。
  限界があることを知り、やめどきを自己決定できるのならチャレンジしてください。