《1822》 抗がん剤の副作用の個人差 [未分類]

がん医療、ここが分からないシリーズ・15

Q なぜ人によって抗がん剤の副作用の出方が違うの?

  どんな抗がん剤・分子標的薬にも、注意事項には、「副作用には個人差がある」と書かれているかと思います。
  なぜ人によって、副作用の出方が違ってくるのでしょう? 
  そもそも、なぜ抗がん剤を使用すると、大きく副作用が出るのですか? 
  また、長尾先生から見て、一番しんどい副作用とはどんな症状ですか? 教えてください。

 たしかに抗がん剤の副作用には個人差がありことは私も日々、実感します。

  吐き気が強く出る抗がん剤には、事前に強力な吐き気止めが使われていますが、
  それでも吐き気が出る人がいる一方、なんともないという人もいてそれぞれです。

  いわゆる「体質」ということでしょうか。
  医学的には遺伝子検査によって副作用の事前予測ができるようになりつつあります。

  抗がん剤はもともと毒物ですから、副作用というか、調子が悪くなるのは当然です。
  「抗がん剤で体調が良くなった」というひとを見たことがありません。

  それにしても、「抗がん剤」というネーミングは、見事だと思います。
  もし「抗がん毒」であれば、今ほどは使われなかったでしょう。

  一番しんどい副作用は、全身倦怠感や食思不振でしょう。
  吐いて食べられ体重が減った、というのがよくある副作用です。

  分子標的薬では、特有の皮膚症状も大変です。
  手が痛くて手が使えなくなった人を診ると気の毒です。

  TS1という最も使われている抗がん剤では涙道閉塞による流涙が広く知られています。
  この副作用はTS1を止めても消失しないので、「後遺症」と言ったほうがいいかもしれません。

  抗がん剤の最大の弱点は、全身療法であることだと思います。
  がん病巣だけでなく、全身の細胞にまで作用を及ぼしてしまうのが欠点です。

  がんをやっつける、という目的のために正常細胞が犠牲になるのですからなんとも言えない方法。
  副作用が前面に出て悩んで来られる人には、とりあえず「抗がん剤を休む」ことを勧めています。

  みなさん「目からウロコです」と言われるので、こちらが驚きます。
  疲れたら休むのは常識だと思うのですが、そんな単純な判断ができない人もおられます。

  副作用を軽減して抗がん剤治療を継続する方法は、支持療法と呼ばれています。
  この研究分野もめざましい発展をとげていますが、さらに前進することを期待しています。