愛川欽也さんのように死にたいが……
Q. 70歳を目の前にして、肺がんと診断されました。ステージIIBです。
先日の愛川欽也さん死亡のニュースを週刊誌などで読んでいろいろ考えています。愛川さんの肺がんが見つかったのは昨年の冬だったそうです。自らの意思で手術も抗がん剤治療も一切やらなかったとも書いてありました。
ギリギリまで好きな仕事をして、仕事仲間にがんだと伝えることもせずに、あっという間に旅立つ……ある意味、理想の逝き方だと感じました。
抗がん剤や手術を選択せずに体力を落とさなければ、愛川さんのように死ねるのでしょうか? 今のところ私は体力もあるし、痛みもありません。
A. 愛川さんの報道を見て感じたことは、愛川さんも奥さまも相当に強い意思で
療養方針や最期の場を選ばれたではないかということです。
最初に肺がんが発見された時にどのような状況であったのかは知りませんが、
もしステージIIIないしIVであれば、無治療を選んだことは正解だったのでしょう。
最後まで好きな仕事をして、愛妻にだけは病気を伝えて自宅で静かに逝かれた。
満足、納得した最期、という言葉が自然と浮かんできます。
芸能人には珍しい経過であり、在宅死であったと思います。
というのも、芸能人は付き合いが広いし、様々な情報が入って来るからです。
愛川さんはがんであることを他言しなかったから、周囲から雑音が入らなかったのか。
それにしても、爽やかな印象を受けました。
仮に抗がん剤をしていても、いい時期でやめていたら、同じような経過だったでしょう。
抗がん剤治療は『やるやらない』ではなくて、あくまで『やめどき』なのです。
愛川さんは80歳と、男性の平均寿命を超えていたので、いい選択をされた。
しかし70歳前のステージIIBと聞くと、放置は少しもったいないような気もします。
延命効果が期待できる、いくつかの闘い方が知られているからです。
さらにもし60歳前だったら、もっともったいないような気がします。
しかし治療を拒否される方も実際におられるので、結局は自由意思だと思います。
医者は治療を勧めるというより、さまざまな情報を提供することが大切。
その上で拒否されるのであれば、その自己決定を最大限尊重し支援します。
治療をするしないは、がんの進行度、悪性度、年齢、そして哲学によって変わってきます。
いくつかの選択肢があり、患者さんによって大きく違ってもいいものだと思います。
愛川さんの最期は、多くの人にたくさんのメッセージを残していきました。
自己決定という言葉を、身をもって示されました。
拙書「平穏死・10の条件」の帯ににはこう書いてあります。
「自分の最期は自分で決める!」
まさに愛川さんは、これを地で行かれたのかと思います。
同じく在宅での最期を選ばれた、金子哲雄さんを思い出しました。