《1834》 愛する妻のために未承認の抗がん剤を使いたい [未分類]

がん医療、ここが分からないシリーズ・27

愛する妻のために未承認の抗がん剤を使いたい

Q. 卵巣がんと闘ってきた妻が先日主治医から、

「保険適応の抗がん剤ではもう効果があるものが見当たらない」と言われました。
妻はまだ40代です。
せめて子どもが成人するまでは頑張ってほしい。絶対に死なせたくないのです。
インターネットで検索したところ、未承認抗がん剤の記事がいろいろ載っていました。
アメリカでは効果が確実に認められているものも多くあります。
どうしてアメリカで認められているのに日本で認められていないということが起きるのでしょう? 
そしてどのようにすれば未承認抗がん剤を入手して、使ってくれる病院を探すことができるのでしょうか?


A.
 打つ手なし、と言われたら誰でも同じような気持ちになるのでしょう。
  
 本人はもういい、と思っていても[愛する妻のため]とそう願う優しい夫は少なくない。

  外国で認められている抗がん剤が日本で認められるまでに少し時間がかかります。
  その時間差をドラッグラグと言いますが、お役所の認可システムの問題でしょう。

  以前、卵巣がんの患者会の当事者が講演されていたことを思い出しています。

  「ジェムザールという抗がん剤は膵臓がんだけに認められていて卵巣がんはダメ。
  隣に寝ている膵臓がんの人はその恩恵にあずかれるのに、なぜ私はダメなの?」

  患者さんからすれば当然の疑問でしょう。
  しかし病院からすれば、未承認の抗がん剤を自費で使うことはできません。

  自費診療でいいじゃないか、と多くの人は思われるでしょう。
  しかしこの場合の自費とは、すべての入院医療費全体が自費になるのです。

  ジェムザールの薬代だけではありません。
  入院基本料や検査代などすべての医療費に健康保険が適応されないのです。

  これが国民皆保険制度の基本原則なのです。  
  それを破れば、いまは原則認められていない「混合診療」を行ったことになります。

  腎臓がんで入院中に未承認の先進治療を併用したために入院医療費の全てを
  自己負担とされた清郷伸人さんは、最高裁まで争いましたが敗訴されました。

  国民皆保険制度は素晴らしい制度ですが、がん治療にはついていけないのが現実。
  しかし、こうした先人たちの闘いと知恵で、空気が少しずつ変わってきているようです。
  
  「患者申し出療養制度」が議論されていますが、事実上の混合診療という見方があり
  国民皆保険制度が維持できなくなるという根強い反対意見もあります。
  
  未承認の抗がん剤を入手し使ってくれる病院を探すには、ネットしかないのでは。
  情報は日進月歩なので、ネットや患者会で探すことをお勧めします。

  個人輸入の仕方を指南してくれ、それを使ってくれる医療機関も存在します。
  そうした医師は、製薬会社と深い関係にある医学会とは別の世界にいるようです。

  がん治療難民に真摯に向き合っておられる医者(利益目的ではなく)もおられます。
  それは、自費診療の値段を見れば明らかです。

  たとえば何百万円もの法外な費用を要求する免疫療法などは、論外です。
  そうではなく、本当に真摯に向き合っておられる医療機関も存在します。
  
  大切なことは、患者さん自ら情報を集めて、患者会などに参加することです。
  卵巣がんの件もそうした働きかけもあり、ジェムザールが保険適応になりました。

  ぜひとも諦めずに、奥さんが納得のいく抗がん剤医療を探してください。
  大病院ではなく個人のクリニックのほうが融通がきく場合が多いようです。