昨日まで、約80日間にわたり抗がん剤の“やめどき”に
ついて長々と書いてきました。
私の日々にとって、切実な問題であると認識しているので、
気が済むまで、しつこく、じっくり書かせていただきました。
約80本の記事の中で、いちばん「おすすめ」クリック数が
多かったのはどの記事だったでしょうか?
それは、1868回目の「ギリギリ在宅、死ぬまで抗がん剤」でした。
なんと1000件近いクリックがありました。
しかし同時に、批難ツイートが一番多い記事でもありました。
「殺すぞ」という予告も頂き、周囲をキョロキョロしながら移動しています。
批難ツイートの多くは、どうやら医師のようです。
以前から気がついていたのですが、「おすすめ」が多い時は「批難」も多い。
患者さんの気持ちを代弁すればするほど、同業者からの批難を受ける。
こうした現象は、どんな業界でも似たような構図なのかもしれません。
しかし、医療界は患者さんの命に直接関わる業種ですから、どんなことがあっても
患者さんたちの声(多くの方の総意)から耳を背けてはいけないと思います。
私は、現在のがん医療界のいいところと悪いところを知っています。
1868回は、その悪いところをしっかり書いただけのことです。
「そんなはずはない」「医療を壊す気か」「それは長尾が悪いだけ」との
意見はたくさん頂きますが、「じゃあ医療界も変わろう!」なんて意見は皆無でした。
つまり患者の想いと医者の想いは、180度相反したままなのです。
医者は3人称のがん医療を施し、
患者は1人称でがん医療を語る。
多くの人間は、まずは1人称で物事を受け止めます。
けっして3人称では受け止められない人が、たくさんいます。
もし、がん医療を受ける患者と医者が入れ替わったら、どうなるのか?
実は、そんな本がたくさん出ています。
「がんセンターの医師ががん患者になってはじめて分かったこと」や
「がんの看護師ががんになってはじめて患者の気持ちが分かった」という本。
しかし、そうなってから気がついても遅いのです。
医療者こそ、常に2人称、3人称の視点も持たないといけないのです。
患者さんも同じ。
医者の考え、すなわち3人称の視点も、もし可能ならば持っていてほしい。
しかし両者の想いが相反したままなので、医療否定本が飛ぶように売れます。
それらの本は患者の想いや恨みを強く代弁してくれている「救い」だからです。
がん医療界がいくら1人称を振りかざしても、患者さんの心には届きません。
こうした不思議な現象が、この3年間ほど続いています。
私は、「抗がん剤・10のやめどき」を通じて、双方の想いのズレを描きたかった。
そして目覚めた患者や医師が、がん医療を上手く修正してくれることを願っています。