《1886》 なぜ医療否定本がまだバカ売れするのか? [未分類]

医療否定本がまだまだ売れ続けています。

「医者に殺される」「がんは放置せよ」から始まって、
「医学不要論」「医者は死に神」と、とどまるところを知りません。

いまや、医者が医者を叩く本を書けば、飛ぶように売れます。
患者は拍手喝さいでそれらの本を買い求めます。

出版不況ですから、どの出版社も同じ趣旨の本をこぞって出します。
いわばひとつの流行なのでしょう。

それだけ、患者の想いと医者の想いが相反していること。
相反するどころかますます距離が遠くなっているということ。

医療は、加速度的に進歩しています。
しかし医療不信も、加速度的に大きくなっているのです。

医療否定本の中には、正しいことも書いてあれば、間違いや嘘も書いてあります。
それは残念ながら、市民の方にはなかなか見分けがつきません。

たとえば「がんもどき理論」や「がん放置療法」は間違いだらけだと思うのですが、
患者さんが反応するのはそこではありません。

抗がん剤で苦しみ死んでいった本人や家族の気持ちを、医師が代弁してくれて
いるので、多くの市民は「なんていい医者」と感動して買い求めているのです。

抗がん剤で悩んでいる多くの人にとって、著者は救世主に見えます。
つまり、多分に宗教的です。

しかし書かれている内容には、間違いと正解が混在しています。
正解とは、過剰医療への戒めです。

間違いとは、まったく非科学的な仮説や極論を振りかざしている点です。
今、真面目な市民は、私のこうした文章を見て、とても迷われるのではないか。

というのも、「私のがんはがんもどきでしょうか?」とか「がんを放置したい」
という相談があとを絶たないからです。

セカンドオピニオン外来を3万円出して受けたその足で
泣きながら私のクリニックに相談に来られた人も何人かいます。

私のクリニックではセカンドオピニオンは受けていないので、
私の相談料は、たった270円(1割負担)なのですが。

そうした患者さんの声に応えるために、それらの理論について解説した本を
先月書きあげ、現在、最終的な編集作業に入っています。

間違っている箇所と正しい箇所を、明確に示した本です。
もうすぐ出版されますので楽しみに待っていてください。

現代のがん医療には、欠けているところもたくさんあります。
しかし、その欠点を治せば、さらに素晴らしい医療に変身することが可能なはず。

昨日は、日本緩和医療学会に参加しました。
本日は、日本リビングウイル研究会を主催。

それらの様子も、明日からボチボチ書いていきます。
梅雨の中の集中豪雨に気をつけてお過ごしください。