《1891》 モルヒネは「鎮痛薬の王者」 [未分類]

今日はモルヒネの歴史について述べます。
その起源はアヘンにさかのぼります。

モルヒネは200年以上前(1806年)にドイツの薬剤師ゼルチュルナー
によってアヘンから抽出、精製されました。

アヘンとはケシの実から抽出した乳液を固めたもので、3千年以上前から
作られていたと考えられ、鎮痛薬や睡眠薬として使われてきたものです。

ギリシャ神話の夢の神・モルフェウスにちなんでモルフィウムと命名された
この物質は、歴史上はじめて植物から分離されたアルカロイドでした。

アルカロイドとは毒性などの強い生物活性を持つ有機塩基=アルカリ化合物。
アルカロイドの精製は、モルヒネ以外にも多くの薬品を生み出しています。

アトロピン(抗コリン薬)、エフェドリン(咳止め)、コカイン(麻薬・局所麻酔薬)、
キニーネ(マラリア治療薬)や、抗がん剤のイリノテカン(カンプト)や、
パクリタキセル(タキソール)なども植物アルカロイドから作られた薬品です。

そもそも「アヘン」という言葉は、ケシの汁を表す古代ギリシャ語を起源とする
ラテン語「オピウム」の中国語訳「阿片」を、日本語読みしたものです。

アヘンは、日本には室町時代に薬品として中国から伝わりました。
「オピオイド」とは「オピウム」に由来し「アヘンのような作用を持つ物質」という意味。

アヘンには10%程度のモルヒネが含まれています。
現在でもアヘンからモルヒネを抽出して残ったアヘン殻も薬品の原料として利用されます。

モルヒネはゼルチュルナーが精製に成功した10年後には鎮痛薬として人気が高まった。
アヘンよりも強力で、アヘンよりも混じり物のない単一の結晶なので単位が規格化可能。

そのため、医師が正確に処方できました。
そしてヨーロッパの裕福な上流階級や戦場での使用が広がりました。

その後、さまざまな鎮痛薬が登場しましたが、作用が強力で注射でも内服でも使える
モルヒネは、現在でも「鎮痛薬の王者」の地位を保っています。

(参考文献) あなたの痛みはとれる(日本尊厳死協会編)