なぜ、日本では緩和ケアの普及が遅れているのでしょうか?
いくつかの理由があると思います。
ひとつは、世間・市民の誤解です。
現在でも、モルヒネ=中毒、死ぬ前に使うもの、という誤解が根強い。
最近のトヨタの女性役員の報道を見ても、どこか偏見の匂いがします。
法律は法律ですが、麻薬の誤解を増幅させては緩和ケア推進には逆行します。
もうひとつは、医師の誤解です。
日本のモルヒネ使用量は、欧米に比べて非常に少ない量に留まっています。
2011年のモルヒネと世界での総製造量は、約440トンです。
このうち大部分は、せき止めに使われるコデインなどの製造に使われています。
世界でのモルヒネ総消費量は、製造量の10分の1ほどの約43トンですが、
国別の消費量をみてみましょう。
アメリカが最多で、2万3099kg
イギリスは、 3400kg
そして日本は、約300kg、とわずかです。
国際麻薬統制委員会の統計で、国別の100万人が1日に使う消費量でみても
先進国に比べて日本が少ないことが分かります。
モルヒネだけでみると、アメリカは日本の約30倍、
オーストリアは約60倍、と大きな開きがあります。
さらに西日本は東日本に比べて少ない、という現状も有名な話です。
市民の誤解に加えて緩和ケアに関心が薄い医師が多いのでしょうか。
ある医師会の依頼で、医師対象に「麻薬の正しい使い方」という講演をしたことが
ありますが、聞きに来られた医師の大半が麻薬使用経験ゼロと知り、驚いたことも。
いずれにせよ緩和ケアの普及のためには、モルヒネへの誤解の払拭が急務です。
それは市民と医師の共同作業であると考えます。
え?共同作業?
医者の仕事じゃないの?
実は私もそう思っていました。
しかし加藤佳子先生のお話を聞いていて、そうではないことを知りました。(続く)
(参考文献) あなたの痛みはとれる(日本尊厳死協会編)