時々、外来や在宅で緩和ケアを受けられている患者さんが
医療用麻薬を持って、海外旅行に行かれることがあります。
病院では「外泊」といえば自宅へ帰ることなのですが、
在宅の「外泊」とは外国泊のことなのです。
なかには、長い船旅に出る方もおられます。
そういえば、昨日も長い船旅から帰ったがん患者さんを往診したばかり。
さてモルヒネなどの医療用麻薬を海外旅行に持参してもいいのでしょうか?
先週、あるがん患者さんから聞かれた質問です。
答えは、イエス。
1991年から個人が医療用麻薬を海外に持参する手続きが定められました。
それまでは、空港などで「麻薬密輸」の疑いがかけられる可能性がありましたが、
現在では、そんな恐れは完全に払拭されています。
厚労省が定めた「病院・診療所における麻薬管理マニュアル(2011年4月)」に
海外へ行く理由、携帯する麻薬の品名、数量などを書いた申請書に医師の診断書を
添えて厚労省地方厚生局長に提出して許可を得ると、海外旅行に持参できるのです。
歴史的に見て、医療用麻薬にはさまざまな規制がありましたが、
時代とともに、緩和されています。
現在、がんの在宅患者さんの枕元にはたいてい、頓服用のモルヒネが置かれています。
では、病院に入院されている患者さんのベッドサイドに置いてもいいのでしょうか?
これも、答えはイエス。
2006年の厚労省のマニュアルで入院患者さんが自ら麻薬を管理できることになった。
正確には「最低必要限の麻薬を保管させることは差し支えありません」と書かれています。
「差し支えない」という文章から、それまでは禁じる風潮があったことがうかがえます。
しかしこの規則を知らない病院管理者もいるようです。
以前、大病院のがん病棟の婦長さん自身が末期がんになり、在宅医療を依頼されました。
麻薬をベッドサイドに置くと、その婦長さんが飛びあがって驚いたことを覚えています。
「病院ではダメなのに、在宅ではいいなんて知らなかった!」と、とても喜んでいました。
在宅ホスピスでは真夜中でも自分の判断で麻薬を飲めるのですよ、と説明をしました。
実際、そうできるので、真夜中でも自力でトイレまで歩いて行けていました。
麻薬に関する法律は厳しいので、法律の知識は必須です。
ぜひこの機会に、上記の2点だけでも常識として覚えておいてください。