《1914》 脳腫瘍(膠芽腫)は在宅療養にむいている [未分類]

脳腫瘍の話をしたついでに、簡単にこの病気について解説しておきます。

脳腫瘍のなかでもいちばん怖いのは悪性神経膠腫、「膠芽腫」と呼ばれるものです。
患者の半数が60歳以上でQOLが悪く、もちろん生命予後も悪いがん。

膠芽腫の特徴は、早期発見が難しいことです。
時々、脳ドックを受ける人がいますが、進行が早くなかなか見つけにくいがんです。

51%が局所拡大し22%が多発・播種するので、局所コントロールが重要。
そんな膠芽腫には通常、手術、放射線、抗がん剤の3大治療が行われます。

手術で腫瘍を全て取り切れたらいいのですが、なにせ脳という臓器なので
全部取ると脳の重要機能を失う、というジレンマの中での手術になります。

そのため全摘率は50%程度となり、取り残した病巣が大きくならない
ように、放射線治療と抗がん剤治療を続けることになります。

抗がん剤では、テモダール(TMZ)とアバスチンという薬が使われ併用もされます。
テモダール単独での5年生存率は15%と言われ、12~24回くらい行うそうです。

一方、アバスチンは、スーパーステロイドとも呼ばれ脳浮腫を抑える働きがあります。
ステロイドやグリセオールは在宅でも使えますが、アバスチンの点滴は病院でしか無理。

アバスチンにより患者さんのQOLが保たれると考えられているので、仮に在宅療養に
移行しても、必ずアバスチン点滴のための2~3週間毎の通院が勧められます。

アバスチンとは、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体という血管新生阻害薬です。
大腸がんや肺がんや乳がんなどが再発した場合にも使われる、大変高価な薬です。

在宅療養しながら、タクシーでアバスチン点滴に半年通う患者さんに聞いたことがあります。
「どんな気持ちで通われているのですか」

すると「生きる目標なので死ぬまで通いたい」と答えられました。
病院の先生も「たまにはいい外出だろう」と言ってくれた、とも。

もちろん生存期間の延長やQOLの低下防止効果が確認されているのですが、
いつまで続けるのか、という命題があると私は考えます。

あるがんセンターでは「膠芽腫の患者さんの8割は自分の病院で看取る」と自負しています。
なぜなら、死ぬ前日までアバスチンを打てるから、と抗がん剤の専門家は語っていました。

また、ある脳外科医の話では、膠芽腫治療には、がん治療のすべての問題点があるとのこと。
やや特殊な病気ですが、膠芽腫の治療戦略を勉強するうちに、様々な想いがかけめぐります。

難しい話はともかく、そんな脳腫瘍(膠芽腫)は在宅療養にむいているということは
私の経験そのものですから、是非覚えておいてください。

PS)

今日は新潟県村上市と新発田市で講演しています。