《1916》 よく効く分子標的薬のメカニズム [未分類]

分子標的薬のなかでも、ザーコリやアレセンサのように劇的に効く薬が現れたのは、なぜでしょうか。
こうした第2世代の分子標的薬のがん細胞への作用は、それまでの薬とどこがどう違うのでしょうか。

そのメカニズムが徐々に解明されつつあります。
がんは通常、いくつかの遺伝子異常が積み重なって起きることが分かっています。

がんには、5個以上のがん遺伝子が集まって協力し合って、はじめてがんが生じるものと、
たった1~2個の遺伝子だけでがんが生じるものがあります。

そして後者のタイプには、ALK阻害薬のような薬によって直接、発がん分子を抑制することが可能です。
がんの遺伝子異常が単純であった場合、そこに直接作用する薬があれば、効果絶大となるのです。

発がんプロセスが複雑であればあるほど、どこか1点だけに薬が効いても全体として抑えることは難しくなる。
しかし「ここだけに問題がある」というがんなら、「ここだけに作用する分子標的薬」が著効する可能性がある。

遺伝子医学の進歩が、驚くべきスピードで確実にがんを制御しつつあることを、
私のようなちっぽけな町医者でさえ、肌で感じることができる時代に生きています。

近い将来、抗がん剤のイメージが大きく変わるのではないかと勝手に予想しています。
副作用が強い割に成果が少ない古典的抗がん剤は、だんだん使われなくなるのではないか。

ザーコリやアレセンサのような高い奏功率を誇る、第2世代の分子標的薬が主役になるのでしょう。
もちろん遺伝子検査が必須とされ、遺伝子別の薬剤選択の時代になるのではないでしょうか。

詳しい内容は「抗がん剤が効く人、効かない人」(PHP研究所)に書きましたので、
興味のある方は読んでください。

そしてどんなに効いたとしても、緩和ケアが土台となっていることを忘れてはなりません。
緩和ケアは、すべての医療の土台であり、地域の中あるいは生活の中にあるものです。

1年で効かなくなる分子標的薬もあれば、数年以上効く分子標的薬もあります。
いずれにせよ、分子標的薬の“やめどき”という課題だけは、いつまでも残るのではないかと思います。