《1921》 “がんもどき”のようなもの、はよくある [未分類]

“がんもどき”、という言葉を最初に聞いたのは20年も前のこと。

「うまいこと言うなあ」というのが第一印象でした。

胃カメラや大腸カメラを毎日やっていると、良性とも悪性とも言えない
中間に位置するような病変に遭遇します。

たとえば、胃の隆起性病変を認めた場合、生検をして病理検査に回すと
グループ3と返って来ることがあります。

グル―プ1、2は良性で、グル―プ4、5は悪性ですからまさにその中間。
当時、グループ4は癌を強く疑うが癌ではない!と主張する外科医もいました。

グループ3は腺腫と言いますが、2cm以上くらいになると癌化することがある
のでもし若い人であれば、多くは内視鏡的に切除していました。

がんではありませんが、将来のがん化を考えて予防的に切除するのです。
切りながら、「ああ、この病変は“がんもどき”だなあ」と感じました。

あるいは、1~2cmのグループ4の隆起性病変を内視鏡で切除すると
1週間後の病理検査でグループ3で返って来ることもありこれも“がんもどき”。

胃のグループ3は、4に近い3も混じっていると習いましたが、聞きながら
「これも“がんもどき”やなあ」と思ったものです。

大腸の同じグループ3は、胃とは違って2に近い3というイメージなので
“がんもどき”、というより、「これはがんもどき以下」だとつぶやいていました。

あるいは、大腸の3cm位の背の低い扁平な隆起(側方発育型腫瘍)なんかは、
内視鏡で切除すると大部分がグループ3で、一部が4や5のことがあります。

あるいは、キノコのような形をした2~3cmのポリープの大半は
ポリープの一部にだけがんがあることがあります。

Focal cancerと言いますがこれは日本ではがんですが、欧米ではがんではありません。
日本の保険会社ではがん保険が適応されますが欧米では適応されないこともあります。

こうした病変は、まず転移もしにくいので、まさに“がんもどき”がピッタリ。
がんといえばがんだし、がんでないといえばがんではない。

近藤誠医師の言う“がんもどき”とはちょっと違うのかもしれませんが、
このような「良性悪性どちらとも言えない病変」はいくらでも存在します。

甲状腺がんなども、せっかく見つけても「手術の必要なし」というがんもあり、
がんでありながら、そのがんでは死なないので、まさに“がんもどき”です。

他の臓器でも、“がんもどき”と呼びたくなる病変は、いくらでも存在します。
カルチノイドという病気がありますが直訳すると「がんのような」病変です。

患者さんから「がんもどきってあるのですか?」とか「私はがんもどきですか?」
なんて聞かれることがありますが、「まあそうですかねえ」と答えています。

一方、「本物のがん」とはなにでしょうか?
そもそも本物という限りは、偽物があるのでしょうか? (続く)

参考文献:
長尾先生、「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか?(ブックマン社)

PS)
今夜から福島県相馬市に行きます。
明日は、相馬野馬追です。